「無料だから」「早く受診してくれる」 救急出動目立つ軽症、不適切な利用 18年は最多の7万8309件 高齢化、観光客も増加に拍車


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過去最高を記録した沖縄県の救急出動件数。緊急性がない不適切な利用も目立っている

 沖縄県内の2018年救急出動件数が前年比で154件増えて7万8309件となり、前年に続き過去最多となったことが12日までに、消防庁の「救急・救助の現況」で分かった。出動件数は増加傾向が続いていて、10年前の08年と比べ36%(2万731件)も増えた。一方、搬送人員は46人減の7万1401人だった。救急需要の増加により一部の消防では空白時間ができ、現着が遅れる原因にもなっている。19年はインフルエンザ患者が流行期の冬場以外の時期に増加したこともあり、出動数は最多を更新する可能性がある。

消防庁のまとめによると、出動件数の増加に伴い搬送人員数も増加傾向にある。年齢別でみると65歳以上の高齢者の割合が年々上昇。16年に5割を超え、18年は前年比1021人増の3万8583人で全体の54%を占めた。

  死亡や短期入院が必要な中等症など傷病程度別の構成比では、軽症率割合が全国平均は減少傾向で50%を下回ったのに対して、県内は50%台を維持し17年54・8%、18年54・5%と推移している。背景には人口増加に加え、高齢化や観光客の増加などがある。救急需要の増加は救急車が稼働する状態が続くため、現場到着時間にも影響。県内の1日当たり出動件数と救急の現場到着平均時間は08年が157件、6・8分だったが、18年は214件、8・5分となっている。

  一方、出動数増加の一因に不適正利用の多さもある。那覇市消防局やうるま市消防本部によると「病院が分からない」「早く受診してもらえる」「無料だから」などの理由で救急車を呼ぶ事例があるという。

 那覇市消防局は19年も、速報値で出動数が前年比909件増の2万753件と増加傾向に歯止めが掛かっていない状況だ。同局の担当者は「昨年は熱中症による搬送などが多かった。一方で不適正利用も変わらず目立つ。多くは必要な通報だろうが、軽症も6割を占める。市民には適正利用をお願いしたい」と話した。

 県立中部病院の本竹秀光院長は「今後も高齢者の救急利用は増えていくだろう。観光客も増える中で救急の維持がより困難になっていく。救急車や救急外来に余裕がなくなることで、必要な時に間に合わない事態を招く恐れがある」と警鐘を鳴らした。

(謝花史哲)