【記者解説】西表島の入島制限、年々増す「オーバーツーリズム」への懸念 自然遺産登録へ解決すべき課題とは…


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生い茂るマングローブ林の回廊=2019年12月、西表島(又吉康秀撮影)

 県が沖縄島北部や竹富町西表島の世界自然遺産登録に向けて策定する「マスタープラン」で、西表島への観光客の入島人数に上限を設ける方針を固めた。県が観光をリーディング産業に掲げ、世界自然遺産登録をその起爆剤として期待する一方、過剰な観光客が押し寄せる「オーバーツーリズム」によって観光資源でもある豊かな自然が打撃を受ける懸念が指摘されてきた。自然遺産登録を付加価値の向上につなげるのと同時に、観光規模を抑制することで環境保全との両立を図る狙いがある。

 入島人数の上限設定は規制値ではなく目標値とする方針だが、県は実効性を担保したいとしている。

 自然や環境を保全する施策としてはこれまで、竹富島や伊是名村、伊平屋村、渡嘉敷村、座間味村が“入島税”の徴収を行ってきた。竹富島は島民を徴収の対象から除外する仕組みを昨年、地域自然資産法に基づく全国初の事例として導入した。

 一方、わずかな入島税の徴収で観光客数を抑制できるかは疑問も呈されてきた。県がマスタープランを策定するための「地域部会」には、西表島に入島する際の有力な手段であるフェリーを運航する企業なども参加している。

 県側は官民が一体となった合意形成を経て、民間企業の協力も得ながら入島制限の実効性を担保したい方針だ。ただ直接的には行政機関である県が民間企業の経済活動を抑制する権限は持っておらず、その実現に向けては丁寧な協議が必須となる。
 (島袋良太)