疑いのある地域では全頭処分を ワクチンも抗体できるまで2週間 佐野文子・琉球大学農学部教授


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佐野 文子氏(家畜衛生学)

 豚コレラ発生後に県が養豚関係者を集めた説明会を開いていたが、本来なら消毒や説明会場までの通行ルート決めなどを徹底しないといけない。発生農場の運搬に関わったトラックの移動などで、本島南部まで感染が拡大している可能性が大いにある。

 発生当初、マスコミのドローン撮影の対応や防護服着用が徹底されていないこともあった。この1週間だけでも感染が広がった可能性は至る所にある。旧正月も北部など全域への移動が発生するが、なるべく移動は避けた方が良い。人がウイルスを運ぶ可能性があるからだ。

 県内で豚コレラの発生が相次ぐ中で、ワクチンを打ったとしても抗体ができるまでに2週間はかかり、即効性は期待できず間に合わない恐れがある。本島内に遮断ラインを引いて、感染可能性のある地域で全頭殺処分を実施することの検討も必要ではないか。処分後に新たな豚を導入する場合にはしっかりとワクチンを打つ。希少種のアグーなど、遮断ラインの外で感染可能性のあるものとの接触がまだなければ、離島に運ぶ方法もある。

 1969年にワクチンが実用化されてから日本で豚コレラの発生がなくなるまで約30年かかっている。この歴史から見ると今後も30年規模計画でワクチン接種を実施する必要があるだろう。
 (家畜衛生学)