豚コレラ感染拡大に高まる危機感 沖縄で4例目 「迅速対応を」業界から切実な声


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
県特定家畜伝染病防疫対策本部会議で4例目の豚コレラ発生について報告する玉城デニー知事=15日午前、県庁

 8日に豚コレラ(CSF)の感染が確認されて以降、県内では豚の殺処分や埋却などウイルスの封じ込めに向けた防疫対策が進められた。発生から1週間でうるま市と沖縄市の6養豚場7326頭(速報値)の殺処分と埋却を完了したものの、15日に新たな感染を確認した。防疫対策を進めている最中の発生に、畜産関係者は警戒感を強める。県は関係者を集めた会議を設立して対策を急ぐ考えだが、ワクチン接種など具体的な方針は未定のままだ。

 15日に新たに感染を確認した養豚場を含めた殺処分の合計は、9千頭を超えることになる。県内の飼育数20万6828頭(2018年12月末現在)の4・4%を占める。殺処分数の拡大に県内の養豚団体から「一刻も早くワクチンを打って農家を安心させてほしい」と切実な声が上がる。

 見えない感染ルート

 15日に新たに感染を確認したうるま市の養豚場は、県の検査で一度、「陰性」を確認していた養豚場だった。これまでに豚コレラの感染豚が見つかった養豚場から半径3キロ圏内にある養豚場について、飼育する家畜の一部からサンプルを採取し、陽性か陰性かの判定をしていた。検査は最終的な終息まで期間を分けて3回実施し、養豚場内でウイルスが完全に除去されたことを確認する。

 最初の検査で「陰性」の後に、豚コレラの症状が出たことについて、農林水産省の担当者は「ウイルスの潜伏期間もあって見つけにくいし、飼育する全ての豚を検査すると迅速な対応が難しい」と指摘する。県外では最終検査の段階で陽性反応が出た事例もあるという。

 今回の養豚場は、これまで殺処分が行われた養豚場6カ所と車両や豚の行き来はないが、最初に感染が確認された養豚場から100メートルの至近距離にある。ネズミや野鳥など野生生物がウイルスを媒介したことも考えられる。今後、国と県の疫学調査チームで詳細な感染ルートを調べる。

 狭い沖縄では本島中部以外にも一気に感染が広がる可能性も指摘され、県内の畜産業者は「次は自分の所に来るのではと不安で眠れない農家も多いはずだ」と肩を落とす。

 防疫関係者で議論へ

 玉城デニー知事は15日、新たな感染の確認を踏まえ、国や畜産団体などで組織する防疫対策関係者会議の設立を決めた。会議には有識者や獣医師も参加予定で、ワクチン接種のメリットやデメリットなどを検証し、総合的な防疫方針を導き出す。県は会議の意見も踏まえてワクチン接種を判断する考えだが、畜産団体の幹部は「会議なんてやっている場合ではない。早くワクチンを接種すべきだ」と迅速な対応を訴える。

 希少種「アグー」への感染を避けるため、離島などへの隔離も検討される。県は「今回は発生した養豚場間の距離が近く、制限区域内の感染なので今までと状況は変わらない」と指摘し、現時点でアグー隔離について具体的な方策は定まっていないという。県としては引き続き発生を3キロ圏内に封じ込めることができれば、ワクチン接種も含めて必要性は低くくなるという考え方がある。

 これに対し畜産団体の幹部は「(アグーの)種を保存するためにも安全な場所で育種をやりたいとみんなが思っている」と述べ、ワクチン接種を含めた県の判断を迫った。
 (平安太一)