【識者談話】清浄化開始へ覚悟必要 工藤俊一県獣医師会会長


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工藤 俊一(県獣医師会会長)

 農家からすれば、ワクチンを接種して少しでも早く清浄化したいという強い思いがある。生産農家や運搬、食肉加工など関係産業にとって豚熱(CSF、豚コレラ)の発生はものすごくインパクトが大きい。問題は農林水産省にそれだけのワクチンの備蓄があるかだ。国内各地で発生している中で、優先的に沖縄に持ってこられるのかを懸念している。

 年末に感染が疑われる症状がありながら、通報が遅れ県が初動対応するまで約2週間のタイムラグがある。その間にウイルスが広まった恐れがある。発生直後に、農場周辺をしっかり規制できていたら囲い込みだけで清浄化もできたと思うが、今回は状況が違う。日本は国としてワクチンを打っているので、輸出どうこうを考えるよりも、清浄化するためのスタートを切った方が良い。

 一方で、一度ワクチンを打てば、打たなくても大丈夫となるまでに長い時間がかかる。過去の例では20年以上かかった。接種するならば覚悟をしっかり決める必要がある。

 獣医師会としても獣医師9人が接種を手伝えると確認している。殺処分と違ってそこまで体力は必要ではないのでワクチンの本数と、豚を狭い通路に追い込む人手を確保できれば比較的スムーズに進むのではないか。

 国外にはアフリカ豚熱(ASF)や口蹄疫(こうていえき)など、さらに恐ろしい伝染病がある。空港や港などの検疫体制をさらに充実させる必要がある。