下地幹郎氏が議員を辞職しないのはなぜか 今後の沖縄1区はどうなる?


社会
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 日本維新の会から除名処分された下地幹郎衆院議員が、無所属で国会活動を続けていくことを宣言した。統合型リゾート施設(IR)事業を巡る汚職事件で贈賄の疑いが持たれている中国企業からの現金受領を認めた6日以降、後援会メンバーや支援者との対話を重ねてきた下地氏。議員辞職に反対する後援会の意思を尊重する形で現役続行を決断したが、比例復活議員の続投宣言に対する世論の反発は必至で、今後の政治活動においても難しい局面が続きそうだ。

下地幹郎氏から無所属での国会活動報告を受け、事務所を後にする支持者や後援会関係者=18日、那覇市おもろまちの事務所

 18日午後、那覇市おもろまちの下地後援会事務所には300人超の支持者が詰めかけた。報道陣に非公開にして行った支持者との意見交換は約90分間にわたり、最後は「ガンバロー」三唱で締めくくった。

 終了後の記者団とのやりとりで下地氏は「後援会から辞めてくれとの声があれば辞めなければならない」と語り、20回以上にわたり支持者と意見交換を重ねてきたと説明。活動継続を決めた理由について「後援会の声」に加え、IR事業を巡る贈収賄事件に関与していないことを強調した。

後援会の意思

 下地氏は現金受領を認めて以降、周囲に「辞職せずにいばらの道をいくか、身をきれいにして次に臨むか」と漏らすなど、進退を巡り、二つの選択肢のはざまで揺れ動いていた。

 後援会内部では当初から議員辞職に反対する意見が大勢を占める中で、一部には辞職することで世論の批判をかわし、「みそぎは済んだ」(下地氏周辺)として次の選挙に優位になるとの声もあった。

 ただ、自民やオール沖縄の候補者としのぎを削る衆院沖縄1区で、議員辞職に関係なく、比例復活がない無所属からの出馬はハードルは高い。下地氏の側近は「どの選択肢を選んでも苦しいならば、いばらの道でも議員辞職せず実績を積む方がいい」と語った。

党本部批判

 後援会には、問題発覚の当初から下地氏を突き放す姿勢をとってきた日本維新の会代表の松井一郎大阪市長など、維新への批判が渦巻いている。県内の維新関係者には、昨年の参院選で東京の議席獲得を実現するなど、下地氏が選挙担当として党勢拡大に貢献してきたとの自負もあった。

 一方、昨年の衆院沖縄3区補選では、大阪で自民と維新が対立を深める中、沖縄では補選の自民候補を維新県総支部が推薦したことで、維新の地盤である大阪側の反発を受けていた。

 下地氏の今後を巡っては県内の経済界を中心に、衆院1区の自民現職との選挙区調整や自民復党を求める声が根強い。自民党幹部が今回の事案で「復帰はない」と断じる一方で、衆院1区の保守候補一本化に向けた下地氏の取り込みが容易になるとの見方もある。

 下地氏の除名により維新の会県総支部は、近く支部を解散し、下地氏と新たな政治団体の結成を視野に入れる。年内には衆院解散があると見込まれる中で、無所属となった下地氏がどこまで求心力を保てるか正念場となる。

(吉田健一、知念征尚)