木村淳、東京五輪向け走る 1600R代表目指し沖縄市合宿 トップ選手とスピード強化


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 陸上男子1600メートルリレーで日本代表を経験するなど、沖縄スプリント界の第一人者である木村淳(中部商高―中央大出、大阪ガス)。現在28歳。近年は度重なるけがに苦しみながらも、東京五輪出場という最大目標からはいっときも視線を外さない。「チャンスが少ない中で、一日一日を大切にしないといけない」ともがき続ける。8~18日には沖縄市陸上競技場で合宿を行い、五輪イヤーの一歩目を「自分の原点」という故郷で踏み出した。マイルリレーの代表入りに向け、スピード強化に余念がない。

ウォルシュ・ジュリアン(右)ら国内トップレベルの選手と練習に打ち込む木村淳(中央)=18日、沖縄市陸上競技場(大城直也撮影)

 高校3年時に200メートルで全国総体2位となり、大学3年で400メートルに転向。4年時には国内トップクラスの45秒台に迫る46秒00の自己ベストを記録し、日本陸連のナショナルチームにも招集された。

 強豪大阪ガスに入社後、3年目の2016年に全日本実業団対抗選手権で2位に入った。17年は右足のけがで思うような結果が出なかったが、18年は全日本選手権で2位に食い込み、アジア大会で男子と、男女混合の1600メートルリレーで自身初の日本代表に。ただ「代表入りがゴールになって、気持ちが入らなかった」と予選でスピードに乗れず、決勝はメンバーから外れた。

 その反省から「代表が当たり前という感覚にならないといけない」と世界で戦う選手としての自覚を力に変える。19年も肉離れなどけがが相次ぎ、大会の欠場も目立ったが「仕方ない。一度リセットした」と五輪イヤーへ照準を絞った。

 沖縄合宿ではリオデジャネイロ五輪男子400メートルに出場したウォルシュ・ジュリアンら代表経験者5人と鍛錬を共にした。トップ選手と競い合うことで「競技の特性上、自らを追い込まないといけない。一緒に練習することで『あと1本』ができる」という。

 代表選考レースを勝ち抜くため、目標に掲げるのはスピードの強化だ。足首の強いバネを生かして地面をはじき、大きなストライドで推進力を生む木村。高重量の筋力トレーニングやジャンプの練習で瞬発力を鍛え、国内歴代10位に入る「45秒50を安定して切れるレベルに持っていきたい」と高みを見据える。

 今季は毎年3月にある県内の春季記録会を皮切りに、国内外の大会に出場していく考え。五輪代表枠を勝ち取れば「日本は04年のアテネ以来、1600リレーで16年間決勝に残っていない。決勝にさえいけば、メダルのチャンスも生まれる」と夢を描く。

 山内小3年時に陸上を始め、競技歴20年。自身を育てた故郷への思いも強い。「スプリントで勝負できる沖縄の選手はほとんどいない。自分が(18年に)代表入りし、沖縄の人も代表になれると一つの証明になったと思う。これを次世代につなげていきたい」。県内第一人者としての自覚を胸に、世界最高峰の舞台へとひた走る。

(長嶺真輝)