遺骨からDNA抽出、4月から開始 厚労省が方針 沖縄県保管700人分 身元特定に期待 沖縄戦戦没者


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 【東京】戦没者遺骨の身元を特定するため国が実施しているDNA鑑定を巡り、厚生労働省は20日、県が仮安置所で保管している最大700人分の遺骨の検体について本年度内に東京へ移し、新年度から専門機関でDNAの抽出などに入る方針を明らかにした。現在、DNA鑑定の対象となる遺骨は84検体にとどまっており、大幅に増えることが見込まれる。厚労省は検体からのDNA抽出などが終わり次第、申し出があった遺族の検体とのDNA照合を進める方針だ。

 同日、厚労省で行われた沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」の具志堅隆松代表や、日本法医病理学会の近藤稔和理事長らの要請に対し、稲津久厚労副大臣らが明らかにした。

 厚労省によると、検体の移動は昨年秋から進めており、今年3月までに終える見込みだ。対象は歯や四肢骨、頭蓋骨(側頭骨錐体(すいたい))など、比較的DNAの保存状況が良好とされる部分が中心となる。

 保存されている遺骨は最大700人分とされるが、保存環境は良くないとされる。DNAの保存状況が良い部位を抜き出す必要もあり、実際の鑑定対象となる検体数は大幅に絞られる可能性もあるという。

 厚労省は2017年度から、試行的な取り組みとして鑑定を希望する沖縄戦の遺族を募った上で、県内10地域で見つかった84検体とDNA鑑定を実施する方針を決めてきた。これまでに、申請があった遺族332人分との鑑定を実施したが、戦没者の身元特定には至っていない。仮安置所にある分も加わることで、身元特定の可能性が高まることが期待される。

 具志堅代表は「大きな話だ」と評価した上で、鑑定できない遺骨がある可能性も踏まえ「できるだけ対応してほしい」と訴えた。

 近藤理事長は遺骨のどこを献体とするかによって、専門家が携わる必要があるとした。

 同席した秋野公造参院議員(公明)は「今後も働き掛けていく」と強調した。