沖縄県、豚熱ワクチン接種を国に要請へ 知事「拡大防止へ必要」 経費5.7億円計上


この記事を書いた人 Avatar photo 米倉 外昭
県CSF防疫対策関係者会議報告を受けて、今後の対策を記者団に説明する玉城デニー知事=22日午後6時45分ごろ、県庁1階ロビー

 沖縄県内で豚熱(CSF、豚コレラ)の感染が確認されている問題で、玉城デニー知事は22日夜、「養豚農家や県民の不安を解消し感染拡大を防止するため、予防的ワクチン接種を行う必要がある」と発表し、沖縄県をワクチン接種推奨地域として指定するよう国に要請する方針を表明した。県内で飼養されている豚は20万6828頭(2018年12月末時点)の規模となっている。今後、接種に向けて国との具体的な協議に入り、接種開始時期や宮古・八重山地域も含めて接種するかなど実施方針の確定を急ぐ。

 県は22日、ワクチン接種に必要な経費などを盛り込んだ総額5億7千万円の2019年度1月補正予算案を専決処分した。接種に際して農家が負担する手数料について、県は1頭につき160円を徴収することで調整している。

 玉城知事は23日からの上京期間中に、江藤拓農水相にワクチン接種の方針を伝える。国が沖縄県をワクチン接種推奨地域に設定すると、県は接種する区域や開始時期、対象頭数、ワクチンの必要数量などを定めた「接種プログラム」を作成・提出する。農水省がプログラムを確認し、告示を経て接種開始となる。

 県は22日、養豚事業者団体などの関係機関や有識者を集めた「県CSF防疫対策関係者会議」を開催し、ワクチン接種の是非を中心に感染拡大の防止対策を話し合った。会議ではワクチン接種を玉城知事に提言することで一致し、知事は会議の意見を踏まえる形で予防的なワクチン接種を判断した。

 県内では8日に豚熱の感染が確認されて以降、うるま市と沖縄市の計7カ所の養豚場で9千頭余の豚が殺処分されている。

 会議では、うるま市以北に感染拡大の要因となる野生イノシシが生息していることや、沖縄本島は養豚業の飼養密度が高く他県と比べて感染が拡大しやすい環境にあるといった懸念が示された。15日に4例目が確認されて以降は新たな発生は見られないが、出席した養豚事業者から「感染リスクはまだ排除されたとはいえない」などの意見が出た。

 日本では1969年からほとんどの豚にワクチンを接種してきたが、政府はワクチンに頼らない防疫対策にかじを切り、2006年にワクチン接種を全面的に中止した。だが、18年9月に国内で26年ぶりに発生した豚熱の感染拡大に歯止めがかからず、政府は昨年9月にワクチン接種の再開を決定した。