2次までの1カ月が勝負 知識増やし夢を諦める癖つけないで〈言わせて大学入試改革〉木村達哉


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 僕は沖縄が大好きだ。2019年は11月を除いて沖縄に足を運び、さまざまな学校を訪問させていただいた。年末には第10回夢をかなえる勉強会を開催した。代々木ゼミナールの現代文カリスマ講師である藤井健志先生が「手伝いたい」と申し出てくださったので、木村・藤井の2人で英語と現代文の成績を上げる方法について説明させていただいた。100名以上の生徒たちや先生方、保護者の方々がご来場されて、一生懸命にメモを取っておられた。これからもこのボランティア活動は続けていこうと思っている。

 先日、最後のセンター試験が終わった。現在、国公立大学に対する人気は相変わらずで、18歳人口がこの20年間で45万人も減っているのに、受験生の人口は4万人しか減っていない。つまり大学志望者が劇的に増えたのである。

 なにせ高校卒と大学卒では生涯年収が8千万円から1億円違うのだから、取りあえずは大学に行ったほうが得だと考える人が多くなるのは当然であろう。

 一方で、推薦入試で私立大学に入学する学生の学力の低さが問題視されているが、これは高校のというよりも文部科学省の問題なのだから、それを問題視するのであれば、推薦入試を全て廃止すればいいのである。

 センター試験は非常によくできた試験で、選択式の試験といっても実力のない人が国公立大学に入学するのに十分な点数を取るのは難しい。来年からは経済界の要請を受けて共通テストと名前が変わるが、来年度からもセンター試験レベルのクオリティーを維持してもらいたいと切に願っている。

 受験生はセンター試験が終わってホッとしているだろうが、超が付くほどの高得点受験生を除けば2次試験勝負になるのだから、この約1カ月をいかに過ごすかで合否が決まる。

 よくこの時期は病的に過去問を解く受験生がいるが、人間というのは触れなければ忘れる生き物であることを考え、問題をこなしていても決して点数は上がらないのだから、しっかりと知識を増やすことに念頭を置くべきであろう。覚えていたのに忘れたので不合格になったというようなことではもったいない。

 実際、多くの進学校では忘れてしまったかもしれない知識を呼び戻すための取り組みが行われている。最後の最後まで、英単語や古文単語、数学や物理の解法などを脳の奥から引っ張り出すために努力を重ねてもらいたい。

 最後に。センター試験の結果として、大手予備校によるリサーチが行われる。AとかBとかいった判定が出ることになるが、記号に人生を決めてもらうような愚を犯さないようにしたい。行きたくもない大学に行ってもきっと退屈な生活しか待ち受けていない。夢をあきらめる癖をつけるべからず。自分がどのような人生を生きたいのかを今こそ考え、進みたい大学に進んで、そして生きたい人生を生きてほしいと願っている。

(灘高校・中学校英語科教諭)

     ◇    ◇

 新しい大学入学共通テストが2021年1月に実施されるにあたり、2人の執筆者に交互に月1回、その背景や思いを執筆してもらう。次回は東京大学元副学長の南風原朝和先生が執筆する。