10キロ圏内の豚、24日から出荷再開 名護食肉センター 感染リスクを心配する声も


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 うるま市と沖縄市の養豚場で豚熱(CSF、豚コレラ)の感染が確認された問題で、発生農場から半径3キロ~10キロの「搬出制限区域」にある養豚場の豚について、名護市食肉センターが24日から食肉用の解体処理を一部再開する。10キロ圏外に豚を搬出することは原則禁止されているが、個別の農家が県を通して国と協議した結果、県が出荷の許可を出した。約2週間ぶりの出荷を喜ぶ区域内の農家がいる一方で、ウイルスの除去が完全に確認されていない段階での再開に疑問を呈する農家もいる。

 南城市大里にある県食肉センターも31日に搬出制限区域の農家からの出荷を受け入れる見込み。

 豚熱の発生を受けて搬出制限区域が設定されると、区域内にある養豚場は、制限が解除されるまで豚を区域外に移動することができない。ただし国の指針に基づく例外措置として、一定の手続きや条件をクリアできれば、食肉処理場に豚を出荷することができる。

 区域外への出荷について農家は出荷頭数や運搬ルートなどをまとめた申請書を県に提出し、県が国と協議する。

 最終的に県の家畜保健衛生所の許可を得れば、農家は出荷を認められる。

 出荷前には家畜防疫員の臨床検査で豚熱の症状がないことを確認し、農家は出荷する豚の体温表を家畜防疫員に提示する。食肉処理場でも検査を行い、ウイルス感染がないと判断する。

 農水省の担当者は「感染リスクはゼロとは言えないが、出荷前の検査をすれば差し支えない。搬出制限区域は、農家の生産活動を阻害するものではない」と語る。一方で、出荷を再開する農家数については「プライバシーに関わるので公表しない」と説明した。

 名護市食肉センターは当面、制限区域内の豚の解体作業を毎週金曜日に限定する。

 出荷見込み頭数は24日が約180頭、31日が約400頭。担当者は「約2週間出荷ができない中で子豚が生まれ続け、農家は悲鳴を上げている。区域内で600~700頭の出荷がたまっている」と話す。

 制限区域内にある農場経営者は「タイムリミットはせいぜいあと1週間程度だったので、少しほっとした」と語った。

 一方で搬出制限区域外の農家は、「潜伏期間を考えると、防疫措置完了から数日で出荷することは感染の危険性を広げることにならないか」と強く懸念する。今回の出荷再開が一般の農家に伝わっておらず、県から積極的な発表がないことを疑問視し、「行政は末端の農家まできちんと説明をしてほしい」と訴えた。