【識者談話】「原因が分かるまで飛行停止処分は当然」米軍ヘリ墜落翌日の共同訓練


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 <米軍ヘリ墜落 翌日訓練 識者談話>

 老朽化、訓練激化が要因 前泊博盛氏(沖縄国際大教授)

 事故がどういう状況で起こったのかが事故後すぐに明らかにされないのはおかしい。原因が分かるまで飛行停止処分は当然として、燃料切れだったのか、エンジンの不具合なのか、操縦や整備のミスなのかを明確にする必要がある。

 米軍機が沖縄のみならず日本中を飛び回って訓練が激化し、事故の件数も増えてきている。特にヘリの老朽化は全般的に指摘されており、事故への警戒が必要だ。全国に訓練の幅が広がることで総飛行距離も長くなる。燃料管理が甘くなれば、事故につながる。

 また、日米共同訓練など米軍と自衛隊の一体化が進む中、従来と異なり実戦さながらのハードな訓練をしている。機体が老朽化する一方で、整備態勢が追いつかず事故につながっている。米軍のみならず、自衛隊にも共通する課題だ。

 今回の事故を受け、原因など詳細を明らかにすることなく、米軍と自衛隊が共同訓練を続行したことは事故に対する危機意識がないことを示している。軍事国家に向かってきている。平時でしっかり情報が開示されなければ、有事には全く情報を知ることができず国の動向をコントロールできなくなる。

 日米地位協定の最大の欠点は、航空法が米軍の行動に適用されず、重大事故を起こしてもペナルティー(罰則)がないことだ。民間機では当然に事故調査委員会が入り、機材の使用禁止や総点検の指令が出される。年間2桁の不時着を起こし続けても、おとがめなしというのがおかしい。例えば事故を起こした場合は一定期間の飛行停止を課す規定があれば、簡単に事故を起こせなくなる。

 

 共同訓練参加の可能性 頼和太郎氏(リムピース編集長)

 墜落現場は米海軍がよく訓練に使っている海域だ。事故を起こしたMH60Sヘリコプターが載っていた指揮艦ブルーリッジは揚陸作戦を指揮する船なので、今回の共同訓練に関与している可能性が高い。実戦の際は敵の対艦ミサイルが届かない沖合の離れた場所に停泊して指揮を執る。訓練でも沖縄本島に近い海域の米艦船や陸地まで司令官や作戦参謀を乗せて飛んでいた可能性がある。

 5人全員が助かったという状況からすると、事故の際のダメージは大きくなかったと考えられる。だが、機体が沈んでいるとすれば「墜落」と表現するべきだろう。機体が沈んでしまっているのを「着水」と言うかは疑問だ。いずれにせよ、陸地に戻る余裕がないほど緊急性が高かったということだ。もし陸地の上を飛んでいる時に同様のことが起きれば地面に落ちる重大な事態だ。

 事故機は沖縄での訓練に関与している可能性が高く、同型機も日ごろ県内で飛行している。今回の事故は県民にとって大きな問題だ。

 また、事故機が横須賀海軍施設(神奈川県)でブルーリッジに載せられ沖縄近海へ向かう前、厚木基地(同)から住宅地上空を飛行しているはずだ。神奈川県でも重く捉えられるべき事故だ。

 今後、海に沈んだとみられる機体を引き揚げるかどうかが注目される。最新鋭戦闘機F35が墜落した際など軍事機密が多い機体や、乗組員の遺体が残されている場合は引き揚げる事例がある。だが今回の場合は多くの機密情報があるわけでもなく乗組員も助かっているため、日本側が黙っていれば機体をそのまま沈めておく可能性が高い。

 だが、事故を繰り返さないためには乗組員からの聞き取りだけでなく、機体を徹底的に調べることが必要だ。機体の引き揚げが、真剣に事故を調査する気があるかどうかの要点となる。