子どもの自立には「甘えさせる」が必要 子の自己肯定感を育成 抱っこなど情緒的な要求に答えることで安心感与える


社会
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自己肯定感が育まれる仕組みについて紹介する明橋大二さん=16日、北谷町のちゃたんニライセンター

 多くの母親から支持されるシリーズ本「子育てハッピーアドバイス」の著者で精神科医の明橋大二さんが16日、第53回県母子保健大会で講演し、子どもの健やかな成長には自己肯定感を育むことの重要性を紹介した。体罰は子どもの成長に不利益しかないことを強調した上で、抱っこなど情緒的な要求に応える「甘え」が安心感を与え、子どもの自己肯定感が育まれる仕組みを解説した。

 自己肯定感は0~3歳で土台が築かれる。明橋さんは低くなる要因として虐待や希薄な親子関係のほか、周囲の言動に敏感な子どもがいることへの理解が進んでいないことを挙げた。敏感な子どもについては「人の気持ちを読むことに優れているため手が掛からない子になる。しかし本当は構ってほしい。さらに良い子になろうとするが、放っておかれてしまい、さみしくなる。そして自己肯定感が低下するという悪循環を生む」とし「子どもが背伸びしていることに気付かなければならない」と指摘した。この概念は欧米では広がっているが、日本ではまだ知られていないとして認識が広まることを期待した。

明橋大二さんの講演に聴き入る母子保健大会の参加者ら

 子どもは親への依存と自立を行ったり来たりする中で「甘え」と「反抗」を繰り返し、成長する心の循環についても紹介した。依存の中で安心する一方、不自由を感じることで意欲につながり自立を目指す。しかしその環境を不安に思うと再び依存に向かうという。その上で子どもが自立しようとする要素として「甘え」が必要とし、依存させない放任や過干渉は「やってはならない」と話した。

 「甘えさせる」ことについては、子どもの言うがままにするなど物質的な要求に応える「甘やかす」と逆になっている傾向があるとし、「違いを知ることが大事。情緒的な要求に手助けし、大事にされていると感じてもらうようにしてほしい」と呼び掛けた。