米軍ヘリ墜落、防衛省が根拠なく「着水」と表現 詳細得られず米軍の情報そのまま流す 知事は「墜落」と認識


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米軍嘉手納基地に飛来した、25日に墜落した機体と同型のMH60ヘリコプター=27日、同基地(読者提供)

 米海軍のMH60Sヘリコプター1機が那覇空港から約174キロの海上に墜落した事故を巡り、玉城デニー知事は27日、取材に「墜落だと捉えている」との認識を示した。一方、防衛省は「着水」という表現を使っているが、墜落との違いについて定義を決めていないことが同日、明らかになった。事故の詳細も入っていないといい、明確な根拠もなく「着水」と説明している。

 沖縄防衛局の竹内芳寿次長は公明党県本部からの抗議を受けた場で「着水」と「墜落」の違いを問われ「明確に定義されているとの理解ではないが、米側からの情報提供は着水だとの認識だ」と述べた。一方で「着水という認識は持っているが、どういう状況で着水したのかまだ情報が得られていない」と説明した。

 玉城知事は「墜落」との認識を示しつつも、防衛省の「着水」という説明について「彼らの表現なので、どんな言葉を使うのか、正しいか間違っているかについては議論する必要がない」と評価を避けた。県の統計で「墜落」と分類するかについては「まだそういう議論はしていない」と述べた。

 英語には「着水」を明示する「ditching」という単語もあるが、米海軍は公式ウェブサイトなどで「墜落」の意味も含まれる「go down」を使っている。一方、「crash」と明確に墜落を表す語もあるが、その表現は避けたとみられる。今回の事故について米軍準機関紙の星条旗新聞など多数の米国メディアが「crash」と表現した。

 過去の墜落事故では日米両政府が「着水」という表現で事故を矮小(わいしょう)化した事例がある。

 一方、琉球新報は事故機に飛行艇の機能がないことや機体が海に沈んだことなどを勘案し、一般的な表現として「着水」ではなく「墜落」という表現が適切だと判断した。これまで米軍機の墜落事故を矮小化した日米両政府の発表が複数あったことも考慮した。