【記者解説】管理責任は消えず 原因特定できなかった首里城火災 抜本的防止策の提示必要


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激しく炎上し正殿などが焼失した首里城=2019年10月31日、那覇市首里(小型無人機で撮影)

 首里城火災について、県警は放火を否定した上で「出火原因の特定に至らなかった」と発表した。那覇市消防局も近く会見を開き、同様の結論を示す見通しだ。火元は電気系統設備が集中する正殿北東とみられるが原因は判然とせず、全容解明には遠い県警の捜査終結は、後味の悪さを残すばかりの結末となった。

 火元とみられる正殿北東は火災発生から長時間、銅線も溶ける1050度以上の高熱を帯びた。消防と県警は現場の実況見分で出火原因につながる痕跡を手作業で探したが、焼け尽くされていた。

 首里城を所有する国と管理者の県、指定管理を受けた沖縄美ら島財団を含む関係者は誰も刑事責任に問われなかった。県警は「出火原因を特定できなかった」ことを強調するが、事件化に至らなかったのは結局のところ、火災につながる重大な過失を確認できなかったためだ。

 それでも首里城が焼失した事実と管理責任が消えるわけではない。責任をうやむやにして、再建議論だけが進むことを県民は最も危ぶんでいる。国と県、財団は説明責任を果たし、抜本的な再発防止策を講じる必要がある。このままでは、県民の誰もが「二度目の火災もあり得る」との疑念を払拭(ふっしょく)できないままだ。“沖縄の魂”の復活には、乗り越えなければならない課題が依然として山積している。 (梅田正覚)