首里城、火元特定を困難にしたものとは…日本防災技術者協会理事の鈴木弘昭さん


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 出火原因の特定に至らなかったことはやむを得ない。火災現場で発生する1次溶融痕(ショート痕)は電子顕微鏡で確認することで火元の特定につながる。しかし、銅は1085度を超えると溶ける。恐らく、1200度を上回る炎で全焼した正殿の金属類は溶け、火元を示す1次溶融痕は熱で丸くなりショートした痕跡が見えなくなった。科学的に起こり得る当然の結果と言える。

 防火に関し、設計の段階から間違っていたと言わざるを得ない。木造だから燃えることを前提にした設備が必要だった。あらゆる火災を想定し、放水銃などの機能が最大限生かせる設計と施工が重要。イベント時には大電力の使用が想定される。電線の保護や冷却策など安全管理に基づいたマニュアルを制作し、綿密な確認作業を行うべきだ。

 美観と伝統は重要だが、デザインが先行するばかりではいけない。建造物に電気設備はあって当たり前、美しさを損なわない防火設備は安全のためにはやむを得ない。設計施工の段階から防火アドバイザーなどの専門家を交え、技術的な助言を加えた防火体制の構築が必要だ。世界のモデルケースになるような首里城再建を成し遂げてほしい。