首里城火災、原因は特定できず 県警、捜査を終結 関係者の刑事責任問えず


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正殿付近の火災現場で実況見分を行う県警や消防隊員ら=2019年11月1日、那覇市の首里城

 那覇市首里当蔵町の首里城正殿など6棟が全焼、2棟が焼損した昨年10月31日の火災で、県警捜査第1課は29日、電気系統設備が集中し、火元として有力視される正殿北東からの収集物を県警科学捜査研究所で鑑定した結果、出火原因は特定できなかったと発表した。関係者への事情聴取や防犯カメラの分析などから放火など犯罪の痕跡も確認できなかった。指定管理を受ける沖縄美ら島財団を含め、関係者への刑事責任も問えないと判断した。31日の火災発生3カ月を前にして、捜査は終結。出火原因が不明のまま、国と県は再建へ向けた議論を進める。

 捜査1課や那覇市消防局によると、配線のような物46点を科捜研で鑑定した。周辺の火災熱によって配線の銅線が切れ、断面部が溶けて球形状の塊ができる溶融痕は確認できたが、火災原因につながるショート痕とは断定できなかった。一方、正殿北東から発見された分電盤は火災原因ではないとした。

 捜査1課の喜屋武一郎次席は出火原因特定につながる証拠については「燃え尽くされていた」と述べた。

 県警は現場の状況や関係者への事情聴取などから、刑罰法令に該当する過失は確認できなかったとした。出火原因が不明な上、誰も刑事責任が問われないことについて県民からは疑問視する声も上がった。

 市消防局も近く記者会見を開き、出火原因が特定できなかった経緯などを説明する方針だ。

 県警の宮沢忠孝本部長は同日、県庁の玉城デニー知事を訪ね、捜査結果を報告。玉城知事と沖縄総合事務局、沖縄美ら島財団共に「消防による調査は継続されており、終結するまでコメントは差し控えたい」などとした。

 県警は同日、同財団に対し、規制されていた火災現場への立ち入りを許可した。沖縄総合事務局は2月からがれきの撤去を開始し、安全対策が整ったエリアについては、5月のゴールデンウイークに一般公開するとした。