【記者解説】失業率、全国の2倍から復帰後最低まで改善したわけとは…


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 沖縄の日本復帰後、2018年から2年連続で最低値を更新した完全失業率の背景には、観光需要の増加による景気拡大のほか、産業振興、企業誘致の取り組みの成果などさまざまな要因がある。

 好調な雇用情勢で有効求人倍率や完全失業率の改善が見られる一方、人手不足や非正規雇用率の高さなど、課題への取り組みも必要だ。

 沖縄の失業率は1972年の日本復帰以降、基地従業員の解雇や沖縄海洋博覧会関連の企業倒産などもあり、全国平均の約2倍の高い水準で推移してきた。さらに90年代の大田昌秀知事時代は基地問題で政府との対立が深まるのと比例するように失業率が悪化したことから、経済界を中心に「県政不況」との批判が高まり県内の雇用問題は深刻な課題となった。98年の保守系の稲嶺恵一知事が誕生後もすぐには好転せず、2000年初めは失業率が8~9%台で推移した。

 だが、大型公共事業や観光客の増加に伴う宿泊施設の整備のほか、インバウンドなどによる飲食・宿泊関連の需要拡大などを背景に、県内の雇用環境は改善した。好調な観光産業が主導する形で県内は好景気が続き、観光業や建設業など多くの業界で「人手不足」が指摘されるほど求人が増えている。

 雇用環境の改善が進んでいるといわれている中でも、非正規雇用の拡大や人手不足などの課題は残る。少子高齢化で労働人口の減少も見込まれ、高年齢者の再雇用に取り組む動きも広がっている。人手不足の状況では、1人当たりの業務負担が増え、労働環境の悪化や労働災害の発生につながることが懸念される。

 今後、幅広い世代で働き手の増加が予想されることから、雇用の「量」を維持しながら、雇用のミスマッチ防止や待遇改善などで「質」の改善に重きを置いた取り組みが求められる。
 (関口琴乃)