沖縄で豚熱発生から1カ月 現場で見えた課題


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 県内で34年ぶりの感染確認となった豚熱(CSF)ウイルスの封じ込めを図るため、発生農場で全頭殺処分と埋却、周辺の消毒作業など24時間態勢の初動防疫を実施してきた。だが、防疫作業の現場では多くの課題に直面した。

防疫作業

 県はウイルス侵入を想定した事前訓練を実施していた。しかし、実際に発生養豚場で防疫作業が始まった当初は人員配置がうまくいかず、感染確認が相次いだこともあって夜間の重機オペレーター不足などが課題となった。

 現場対応したうるま市の関係者によると、養豚場で殺処分した豚を埋却地まで運搬する際の連携が取れず、作業の遅れを招いた。

 埋却地の掘削や死骸の運搬などに人員協力した県建設業協会や県トラック協会との連携でも、各現場で必要な人員数の把握などで混乱したという。災害派遣要請で出動した陸上自衛隊第15旅団も活動総括で、現場で指導する県のチームリーダーが日々交代し、実施要領が引き継がれていなかったことなど課題を挙げた。

 県中部農林土木事務所の桃原聡所長は「課題を洗い出し、マニュアルなどを見直したい」と話した。

準備不足

 埋却地の確保では行政の準備不足が露呈した。

 家畜防疫指針では、家畜の所有者に埋却地を確保するよう求めている。これに対し県養豚振興協議会の稲嶺盛三会長は「狭い土地で養豚している県内農家に、感染に備えて埋却地を準備しろというのは無理がある」と指摘する。

 1月10日に市内の養豚場で感染が判明した沖縄市では当初、埋却地が決まらず殺処分の作業開始に支障が出ることとなった。感染の事態への備えとして複数の埋却候補地を事前に県に報告してはいたが、発生養豚場から距離が遠く面積も狭いことや、民間地に隣接していることなどから使用できなかった。

 沖縄市の担当者は「毎年の報告は、具体的な発生を想定したものではなかった」と振り返った。

 一方、今月2日に5例目の感染が沖縄市で確認された際には、うるま市内の県有地の伐採と磁気探査を1月中旬に実施していたことから、豚の死骸の埋却まで3日間で完了した。県はうるま市や関係機関と水面下で交渉を進めており、現場作業の関係者は「先を見越した県職員の対応は適切だった」と評価した。

通報年明けに

 最初に感染が確認された農家の男性は、19年11月から豚の様子に違和感を抱き、12月下旬には死ぬ豚が増えていた。それにもかかわらず県家畜保健衛生所への通報は年明けになってしまい、ウイルスの拡散を招いた。県の機関が年末年始は休みだと思い込み遠慮してしまったという。

 実際には家畜保健衛生所は24時間365日、家畜の異常などの通報を受け付けている。県の担当者は「繰り返し伝えてきたつもりだが、完全に浸透させるのは難しかった」と周知不足を反省する。

 感染が明らかになって以降は通報が増え「感覚的には以前の10倍くらいに増えた」(県畜産課の仲村敏課長)という。