沖縄のブランド豚「アグー」を隔離 「種の保存」のため必要だが、懸念も


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
第2回県豚熱(CSF)防疫対策関係者会議であいさつする玉城デニー知事と委員ら=10日、県庁

 豚熱(CSF)の感染拡大を抑えるため沖縄本島全域の豚にワクチン接種が始まるのを前に、県は国内唯一の固有種である「アグー」の純粋豚50頭を沖縄本島から県内離島に隔離する方針を固めた。アグーの「種の保存」の必要性を訴える生産者の声を踏まえ、島ごとで分散飼育することにより、感染症によってアグーの系統が全滅してしまうリスクの回避を図る。

 有識者や畜産関係団体などで構成する「県豚熱(CSF)防疫対策関係者会議」の第2回会合が10日に県庁で開かれ、玉城デニー知事は「会議の議論を踏まえ、アグー純粋種の保全などに速やかに対応していく」と呼び掛けた。

 2018年12月末現在のアグーの飼養頭数は1108頭で、県内で飼養される豚の約0・5%にすぎない。会議で県は、このうち50頭をワクチン接種を開始する2月中旬までに離島に移す計画を示した。

アグー(県提供)

 同会議は1月22日の初会合でワクチン接種の方針を玉城知事に要請することを決めるなど、県が重要な政策決定の際に判断を仰ぐ専門機関となっている。会議後、委員の稲嶺盛三氏(県養豚振興協議会会長)は「早めにアグーを隔離させなければ、ワクチン接種の時期が後ろにずれてしまう。早い決断が重要だ」と述べ、県の対応を促した。

 県は離島での隔離について、50頭が繁殖後も飼育でき、バイオセキュリティーのレベルが高い施設を新たに整備する方向で検討している。

 だが、整備までには時間を要するため、県は緊急の対処として、ワクチン接種が始まるまでに既存の施設がある離島にいったん50頭を運び、新たな施設が完成し次第、改めて移動させる2段階を踏む。

 県は1次移動先に久米島を検討しているが、その後の飼育施設を整備する離島は具体的に決まっていない。豚の数や人の行き来が少ない地域を選ぶという。

 隔離には課題も伴う。もともと少ない頭数で血統の近いもの同士交配されてきたアグーは、近親交配の度合いを表す「近交係数」が高い。近交係数が高まれば繁殖能力が下がり、奇形が生まれる場合もある。

 県は近交係数が高まるリスクを懸念して、隔離する50頭を遺伝的に離れたアグーから選抜する方針だが、限られた頭数を隔離する中で近交係数の高まりが免れない懸念もある。

 会議に出席した委員からは隔離する頭数について「50頭では少ない」との意見もあったという。また隔離を一つの離島が担うのは心もとないという指摘もあり、複数の避難先を設ける必要があるのではないかという意見も上がった。