戦後沖縄での「差別」考察 東大研究員・土井智義氏「奄美出身者排斥は米国策」


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米国民政府の施策を通して在沖奄美出身者の処遇を考察した土井智義氏=8日、那覇市の沖縄大学

 歴史講演会「米統治下の在沖奄美出身者」(沖縄奄美連合会、沖縄大地域研究所主催)が8日、沖縄大学で開催された。戦後の沖縄における奄美出身者の排斥処遇について、東京大学特別研究員の土井智義氏(41)が「沖縄と奄美出身の『人』の対立関係に押し込めず、誰が環境をつくったかを考える視点が必要」として米国民政府の施策を考察した。奄美出身者ら約60人が聴講した。

 戦後、奄美群島は沖縄と共に米統治下に置かれた。日本本土と経済が断絶され、多くの島民が沖縄へ出稼ぎに渡った。1953年12月の奄美の日本復帰後、在沖奄美出身者は外国人登録を義務付けられ強制送還の対象となった。参政権剥脱や公職追放もあった。

 土井氏は琉球政府設立(52年4月)前の「無籍者問題」に着目。居住登録がない奄美、先島からの移住者を危険視し排除する現象が、警察やメディアの主導でつくられたと指摘した。

 米国民政府が日本人建設労働者らを対象とした強制送還策・第1次入管令(53年1月)を基に54年2月、第2次入管令で奄美出身者も対象化した流れを追い「過剰人口や送金によるドル流出、治安まで沖縄統治上のリスクを在沖奄美出身者に集約し、完全抹消を計画した」と述べた。

 当時のオグデン米国民政府副長官の書簡を読み解き「国家的に正当化された日本人送還策を基礎とすることで奄美人差別の印象を避け、無籍者を巡る社会の亀裂も利用した。米国が奄美返還前から計画した明確な国策だった」と強調した。(岩切美穂)