比嘉大吾、6回畳み掛ける 復帰戦TKO勝ちも試合後の一言は…


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 約1年10カ月ぶりにリングの上に立った比嘉大吾は、フライ級で15戦連続KOを成し遂げた勇猛果敢なファイトスタイルそのままに、フィリピン・バンタム級11位のジェイソン・ブエナオブラを6回2分25秒で打ち破った。入場シーンでは沖縄から駆けつけた約250人の応援団に出迎えられ、試合中も「大吾コール」に背中を押された。ブランクの影響は隠せず、パンチをもらうことも多かったが最後はボディーを連発し、相手をひざまずかせた。復帰戦の勝利にファンは喜んだが、本人はまだまだモチベーションが上がらない様子。「次の試合のことはまだ考えられない」と。まだ模索が続きそうだ。6回戦の屋嘉部悠大(沖縄水産高出)は2回1分53秒でTKO負け、山口臣馬(同)は判定で引き分け。4回戦の伊藤大賀(前原高出)は判定勝ちした。

試合の勘戻らず「最悪」とも

4回、コーナーに追い込んで強烈なボディーで攻める比嘉大吾=13日、東京都の後楽園ホール(大城直也撮影)

 序盤から打たれながらも素早い踏み込みで力強い左右のフックやボディーの連打を決めた比嘉大吾。ダメージが蓄積した相手に対し、6回に右ボディーでぐらつかせると、畳み掛けて最初のダウン。大吾コールが響く中、左ストレートから右ボディーで勝負を決めた。

 激しい闘争心がちらつく場面もあったが、比嘉本人の最初の一言は「最悪でした」。1年10カ月のブランクと、階級変更で思ったように体が動かず、けん制するような相手のストレートをもらい、打ち終わりを狙われた。試合後は顔を真っ赤にして「ボクシングはそんなに甘くない。このざまです」と自嘲気味に語った。

 これまでは瞬発力を生かして相手の懐に入り、強烈な連打を繰り出していた。今回は「入り方を忘れている」とまだ試合勘は戻ってないようだ。「ただ前に出るボクシングでここぞの倒し方が分からず、疲れて頭も回らなかった」と、反省のような言葉が続いた。

 一方、入場シーンで予想外のファンの多さには喜んだという。勝利したことには「計量失敗しても離れなかった個人スポンサーや仲間、その人たちのために勝てて良かった」と、安堵(あんど)の表情を見せた。

 前日に意気込みを問われ「無」と答えたように、勝利にも試合をただこなしただけ、との感覚で気持ちの高ぶりはないという。

 リング上での勝利者インタビューでは冗談を交えてはいたが、「ファンが熱狂的でも本人がやる気がなかったら申し訳ない。(モチベーションが)上がらないなら辞めようと思っている。今度いろいろ考えたい」と、迷いがあることは隠さなかった。所属ジムの具志堅用高会長は「精神的な部分を立て直していかないと。時間はかかると思う」と語った。

(嘉陽拓也)