琉球諸語の継承が危ぶまれる中、沖縄各地の言葉や文化をどう継承していくのか考える国際シンポジウム「琉球諸語と文化の未来」(名桜大学主催、琉球新報社共催)が15日、那覇市泉崎の琉球新報ホールで開かれた。作家や言語学の専門家らが登壇し、しまくとぅばの継承へ「使う機会や場面を増やすことが重要」など提言が相次いだ。約300人が来場し、登壇者たちの議論に聞き入った。
基調講演で名桜大学大学院国際文化研究科博士後期課程研究科長の波照間永吉さんは、1879年に琉球が日本へ併合されて以降、戦前・戦後の日本語教育の中、しまくとぅばを使える県民が減っていった歴史を振り返った。
琉球文学を体系的にまとめる「琉球文学大系」の編集・刊行に名桜大学が取り組んでいることに触れた波照間さんは「琉球語がどれほど豊かな世界を持ち、日々の生活にも生かしていたか次の世代へ伝えていきたい」と強調した。
ハワイ大学ヒロ校ハワイ語学部長のケイキ・カヴァイアエアさんは、1980年代初めには消滅の危機にあったハワイ語を復興させた事例を紹介し「例えば体育館でスポーツをしながらハワイ語を使うなど、学校や家庭、地域などあらゆる場面で使うことが大切。たとえ使い方が間違っていても、使える人がサポートしながら覚えていく必要がある」と指摘した。
芥川賞作家の大城立裕さんや作家で元外務省主任分析官の佐藤優さん、沖縄国際大学教授の西岡敏さんらも登壇し活発な意見交換が行われた。
言葉の大切さ実感 来場者「もっと授業にも」
地域の言葉や文化の継承について議論が交わされたシンポジウムには若者から高齢者まで幅広い年代が駆け付け、耳を傾けた。
しまくとぅばを使える県民が減っている現状に危機感を持って駆け付けたという那覇国際高校3年の銘苅実祐(みゆ)さん(18)=浦添市。ハワイ大学ヒロ校のケイキ・カヴァイアエアさんと共に登壇した娘のカナニ・マカイモクさんが、幼い頃から母親にハワイ語を教わり、話すことができるようになった経緯に感銘を受けた様子。「言語教育として、もっとしまくとぅばを教える授業があってもいい」と力を込めた。
用事で本島を訪れ、参加したという石垣市の具志堅貴哉(たかや)さん(23)は、元外務省主任分析官の佐藤優さんが米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設に触れたことに着目。「沖縄県ではどの問題を考えても基地に行き着く。政府に対峙(たいじ)するためには地元の言葉や文化を踏まえることがいかに大事かと学んだ」と強調した。