首里城復元に関わった漆芸家・前田孝允氏死去 沖縄県指定無形文化財保持者


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 玉城江梨子
前田孝允氏

 県指定無形文化財「琉球漆器」の保持者で、1992年の首里城復元の際、漆塗りで携わった漆芸家の前田孝允(まえだ・こういん)氏が1月14日に亡くなっていたことが17日分かった。83歳。家族が同日午前、首里城公園友の会(前田氏が会長)を通じ公表した。

 前田氏は1月14日午後7時42分、心筋梗塞のため、那覇市内の病院で死去した。大宜味村出身。葬儀・告別式はすでに家族葬(喪主・妻栄さん)で済ませている。

 栄さんは17日発表した文書で「葬儀は故人の生前の意志で家族のみで執り行った。(公表が)遅れたことをお許しください」などと説明。前田さんについては「漆芸家として首里城に関わり、務めることができたことは誠に幸せだった。最後まで首里城の再建に尽くす意欲に満ちていた」と振り返った。

 前田氏は1936年11月30日生まれ。琉球大学美術工芸科を卒業後、株式会社紅房入社し、68年に前田漆芸アトリエを開設した。2005年から11年までは浦添市美術館館長を務めた。91年には県指定無形文化財保持者に認定された。

 88年に首里城正殿実施設計専門委員に就任。首里城の復元作業に携わり、93年には琉球国王の椅子を復元した。

 前田氏は2008年に第44回琉球新報賞(文化功労)を受賞。05年に那覇市天久に完成した琉球新報社の当時の社屋(那覇市天久)ロビーに朱漆「金龍五色之雲」一対を制作寄贈した。那覇市泉崎にある現在の琉球新報社社屋に移し展示している。【琉球新報電子版】