海水分析でジュゴンの生息特定も 龍谷大など研究チームがDNA増幅技術を開発


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 瀬底 正志郎
2008年3月に名護市嘉陽沖で確認された絶滅危惧種のジュゴン(ヘリから撮影)

 龍谷大、県環境科学センター、鳥羽水族館(三重県)の研究チームは19日までに、絶滅危惧種ジュゴンが体外に放出したDNA(環境DNA)を選別して人工的に増やす技術を開発したと発表した。チームは沖縄など潜在的なジュゴンの生息域で海水をすくって分析すれば、ジュゴンがその海域に生息しているかを調べられる技術に応用できる可能性があるとして、研究を続けている。

 技術を開発したのは龍谷大理工学研究科の大学院生平石優美子さん、同大の丸山敦准教授、県環境科学センターの小沢宏之さん、鳥羽水族館の若井嘉人副館長らの研究チーム。

 国内で唯一ジュゴンを飼育している鳥羽水族館から雌ジュゴンの毛根やふん、飼育水などの提供を受けた。これらを試料に使い、特定のDNAを増やす「PCR」という技術、ジュゴンのDNAだけを選択的に増やす「プライマーセット」という技術を組み合わせ、DNAを検出できるようにした。

 ジュゴンと近縁種であるマナティーのDNAも増幅を試したが、増幅は認められなかった。そのためジュゴン以外の生き物のDNAが誤って増えることはなく、検出ミスを防げた。

 PCRを活用した生物のDNA増幅は外来種のブルーギルや琵琶湖などにいる固有種ハスなどの生息調査で既に実用されている。

 水槽で飼育されているジュゴンの環境DNAを増やして検出することに成功した段階のため、チームは今後、自然界で採取する海水がどの程度の濃度であれば技術が有効に機能するかを調べる。最終的にはジュゴンの行方が分からなくなったり、ジュゴンの目撃情報はあるものの公式な確認はされていない沖縄近海での生息調査に活用することを目指している。

 研究成果は日本生態学会の学会誌でオンライン版が公開された。