PFAS基準値、米国内ではより厳しい州も 豪は規制対象が広く 識者は厚労案に疑問


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 厚生労働省の水質基準逐次改正検討会が水道水中の有機フッ素化合物PFOSとPFOAの暫定目標値を合計で1リットル当たり50ナノグラム以下とする案を了承した。各国の基準で最も厳しい米環境保護庁(EPA)の1リットル当たり70ナノグラムより厳しい値を採用することで「安全性」を強調した形だ。ただ、有害性が次第に分かってきた他の有機フッ素化合物が規制対象となっていないほか、米国内ではEPAよりも格段に厳しい規制を独自に設定する州もあり、識者からは今回への決定に対する疑問の声もある。

 PFOSやPFOAは「PFAS」と総称される有機フッ素化合物の一部。PFASは4千種以上存在するとされる。PFOSはその有害性から既に使用や製造が国際的に規制されたが、代替物質として普及した「PFHxS」も有害性が解明されてきた。同物質は2021年春に国際的に製造や輸出入、使用の禁止が決まる可能性がある。

 オーストラリアの水質基準は、規制対象となるPFOSの値にこのPFHxSの値も加える内容。またスウェーデンでは11種物質の合計で1リットル当たり90ナノグラムと、より広いPFASを規制対象にしている。

 一方、米EPAの基準についても、汚染問題を抱える州が独自により厳しい基準値を設定する事例が相次いでいる。

 例えばPFOSに関してミシガン州は1リットル当たり8ナノグラム、カリフォルニア州やニュージャージー州は同13ナノグラムなどだ。米EPAの基準も厳格化される傾向にあり、検討会が決定の参考にしたEPA値の妥当性を疑う声もある。

 こうした状況から、国とは別に、県も基準値を設定すべきだとの声も一部にあるが、県幹部は「米国と日本では州と県が持っている権限やマンパワーに大きな違いがある」として独自の基準設定には否定的だ。