18日に宜野湾市の一部地域で起きた高濃度塩素水の流出事故は、夕食準備などの時間帯に飲用禁止が呼び掛けられ、市民に衝撃が走った。発生から約4時間で濃度は通常値に戻ったが、乳幼児の飲食に水を扱う保育園などは独自で水質検査し神経をとがらせる。市上下水道局は事故後から復旧まで、市ホームページ(HP)や防災無線などで水道水の飲用禁止を呼び掛けたが、対象地域の住民全員に情報が行き届かず、課題を残した。
■「子の命に関わる」
事故のあった長田第二配水池から給水を受ける保育園の60代女性職員は「水は子どもの命に直接関わる」と不安に駆られた。19日早朝に水道局に問い合わせ、園の水道水の水質検査を依頼した。
結果は、厚生労働省が定めた塩素濃度の目標値(1リットル当たり1ミリグラム以下)ぎりぎりの同1ミリグラム。職員から「(数値は)高いが支障はない。(水を流し続けることで)これから薄くなっていくだろう」と説明された。園はこれまで毎朝1回水道水を簡易検査していたが、女性職員は「1日4回に増やし、しばらく検査していきたい」と警戒する。
琉球大農学部の安元純助教(水環境工学)は「(水道局は)余裕を持った運営管理が必要だ。きれいな水質を保つため、流域全体の水管理も求められる」と指摘する。
■「聞こえなかった」
「水道水の飲用はしないでください」
事故後、市は地域の自治会や小中高校、大学などに防災無線などで注意喚起した。だが、宜野湾区の自宅で家事をしていた70代女性は「スピーカーで何かを言っているのは分かったが内容は聞き取れなかった」と話す。その後詳細が分かったが、「夕方は忙しくて気付かなかった人は多かったはず」と推測する。
事故発生から2日たった20日午後5時半現在、水道局には357件の問い合わせが寄せられた。中には「広報が聞こえなかった」「通常の値に戻ったことを知らなかった」と訴える市民も。HPなどを確認できない、高齢者などの情報弱者とみられる。
事故直後、水道局は復旧作業や市民からの問い合わせの個別対応に追われた。再発防止策の徹底に合わせ、非常時の広報態勢も今後の課題と言える。
(金良孝矢)