「全国で議論」提案の動き 県外31市町村で「辺野古新基地中止」採決 〈壁突く民意 県民投票から1年〉下


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「新しい提案」の陳情を全国約1700の地方議会に提出すると表明した安里長従氏(右から2人目)=2019年3月25日午後、県庁

 辺野古埋め立ての賛否を問う県民投票から1カ月後の2019年3月、市民有志らでつくる「新しい提案」実行委員会は全国1788地方議会に対し、陳情と意見書案を一斉に送付した。陳情では、辺野古新基地建設を直ちに中止し、普天間飛行場の運用を停止すること、普天間の代替施設が必要か全国で議論し、必要ならば沖縄以外を候補地とすることなどを求めた。

 25日に県庁記者クラブで開いた記者会見。実行委員会の責任者で「辺野古」県民投票の会副代表も務めた安里長従氏は「政府と国民は民主主義にのっとり、今回の県民投票の民意に沿って、民主的な手続きによる解決を緊急に行う必要がある」と呼び掛けた。

 「新しい提案」を受け取った全国の地方議会は、次々に陳情を採択した。北海道の更別村議会や秋田県井川町議会は6月6日に全会一致で意見書を可決。その動きは沖縄から遠く離れた場所にも広がった。実行委員会によると、今月22日現在、意見書の可決・採択は県外で31市町村議会。実行委員会の当初目標の1%を超え2%に届く勢いだ。安里氏は3月にも改めて採択されていない地方議会への陳情送付を考えている。

 県民投票の結果を受け、県外の住民や団体が独自に地元議会に請願などを出す動きも出てきた。岩手県議会は市民団体からの提出を受け、辺野古埋め立て工事を中止し、沖縄県と誠意を持って協議するよう政府に求める請願を採択し、首相や外相に送付した。

 一方、県内では「新しい提案」の可決や採択は名護市、うるま市、北中城村、中城村、北谷町の5市町村議会にとどまる。県議会でも継続審議となっており、辺野古新基地建設に反対の立場の与党や労組などに理解が浸透していないのも実情だ。「県民投票の結果が最大公約数であって地方議会に諮るべきものではない」(オール沖縄関係者)などの意見も根強い。

 こうした意見もある中、辺野古を抱える名護市議会に「新しい提案」の意見書を提案した岸本洋平市議は「若い人たちはイデオロギーにとらわれず、基地負担が沖縄に集中しているのは民主主義からしてもおかしい、と共感できるのではないか」と話す。また「閣議決定のみで強引に進めてはいけない」と国民に理解を広げ、国会で審議することが必要だと考えている。

 安里氏は「県議会で可決し、全国に訴えれば大きな波を起こせる。今がチャンスだ」と話す。政府が県内への移設を推し進めるのは「沖縄県外では(移設の)理解が得られないから」という政治的な理由と指摘する。しかし辺野古移設の中止と民主的解決を求める人が全国に増えれば「政府の『辺野古が唯一』という論理は瓦解(がかい)する」と見通す。

 全国にインパクトを与えた県民投票から1年。「国の在り方を決める権利は国民が持っている」という民主主義に沿って“民”の力を信じ、問題解決を働き掛ける市民らの取り組みの広がりも今後、注目される。
 (中村万里子)