【記者解説】米軍の住民軽視が浮き彫りに 抗議受けてもつり下げ訓練をする根拠とは…


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 読谷村や村議会がこれまで米陸軍トリイ通信施設内でつり下げ訓練や戦術訓練を行わないよう再三、米軍に求めてきたにもかかわらず、またも米海兵隊のCH53大型輸送ヘリコプターが海上に鉄製物体を落下させた。背景には、トリイ通信施設の運用や位置付けを巡り、読谷村側の要求に背を向け続けている米軍の姿勢がある。

 読谷村ではパラシュート降下訓練による女児圧殺事故(1965年)や、CH53ヘリによる都屋漁港西沖での廃車落下事故(2006年)などが起きており、つり下げ訓練に対する村民の反発は根強い。

 米軍は垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの配備前、自ら作成した環境レビューで同基地の着陸帯は戦術用ではなく、物資輸送や緊急時に使用する管理着陸帯と区分したものの、つり下げ訓練を繰り返してきた。戦闘訓練の一切を認めていない村は訓練が確認される度に抗議してきたが、米軍や沖縄防衛局はこれらの訓練は日米合意の範囲内で行われており、正当性が認められると強調。双方の見解は平行線をたどっている。

 度重なる訓練の強行や事故に村民の不安と憤りはピークに達し、日米地位協定の抜本的改定や、村民大会の必要性を訴える声も出ている。一方、米軍は今回の事故について危険性を除去するための処置だったと主張し、村への謝罪もしていない。今回の事故やその後の対応により、基地負担軽減を求めている周辺住民を軽視する米軍の姿勢が一層浮き彫りになった。

(当銘千絵)