「自分を好きになって」 徐々に筋力が低下する病の車いすのミュージシャン 巣立ちを前に絆の合唱でエール


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コンスタントグロウの「さくらはまだか」を合唱する謝花勇武さんと寄宮中の3年生=2日、那覇市の同校

 沖縄県那覇市立寄宮中学校(前田比呂也校長)は2日、年間を通して生徒の人権教育に協力した車いすのミュージシャン謝花勇武さん(41)を学校に招き、3年生を送る会を開いた。生徒は謝花さんがボーカルを務めるバンド「コンスタントグロウ」の代表曲「さくらはまだか」を合唱し、1年間の絆を確認した。本来は卒業式に招いて一緒に歌う予定だったが、新型コロナウイルスによる肺炎拡大のため出席者が制限されるため、学校職員が急きょ送る会を企画。3日からの休校を前に、失われそうだった思い出の1ページをつづることができた。

 校舎全体を見渡せる中庭「サンプラザ」に、卒業を控えた3年生約200人が集まった。少し離れた位置で2年生、校舎のベランダで1年生が囲み、保護者も十数人集まった。ウイルス感染防止のため、閉め切った室内ではなく屋外での開催。音響設備は十分ではなかったが、歌声はちゃんと響いた。「さくらはまだか」は清掃中に流れている曲で、学校のテーマソングのような位置付けだ。全員にCDも配布されていて、急な合唱でも3年生は歌詞を見ることなく歌い上げた。

 徐々に筋力が低下する脊髄性筋萎縮症により、車いす生活をする謝花さんが生徒に伝えたかったのは「自分を好きになって」ということ。「中学生は悩みが多いが、自分を好きになってあげると、大切な人もできる。僕はこの体が好きで、誰にも譲りたくない。その感覚を持ってもらいたかった」。歌声を聞いた謝花さんは「自分のために、自分の人生を歩んで」と、旅立つ生徒にエールを送った。

 卒業後、格闘家を目指す3年生の宮良和志さん(15)は「勇武さんのおかげで自分を好きになり自信を持つことができた。みんなで歌えて良かった」と感謝した。(稲福政俊)