【記者解説】住民投票の〝無力化〟図る見方も… 自衛隊配備で市有地売却議案を可決


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 石垣市議会は、本年度内の契約締結で陸上自衛隊配備計画を円滑に進めたい防衛省や市の意向を優先し、市有地の売却を可決した。配備による生活・自然環境への懸念が根強い中、民意を問うこともなく、市と与党が強硬に市有地提供に向けて突き進んだとの印象は拭えない。係争中の住民投票の司法判断前に山場を越えることで、住民投票の“無力化”を図るためだとの見方も広がる。

 中山義隆市長や市議会与党は市長選や市議選で民意が示されたとの認識だ。だが中山市長は市長選で配備に理解を示すとした一方で、その賛否を明確にすることはなかった。

 中山市長の受け入れ表明後の市議選では、多くの与党議員が計画に賛成して選挙に臨んだ。一方、2日の議場で賛成した議員の中にも、平得大俣への配備に否定的だったり、地域合意の必要性を主張したりする議員もいた。明確に民意が示されたとは言いがたい。

 市議選直後に有権者の4割近い1万4千人超が、配備計画に絞った意思表示の機会を求めたこともその表れだと言える。

 住民投票についての司法判断を待つことなく、市有地提供に踏み切った市や与党への反発は強まることが予想される。一方で、進む配備計画に諦め感が広がっているとの声もある。配備に反対する野党などが打開策を提示できるかどうかが、配備計画の行方を見通す上で焦点となる。
 (大嶺雅俊)