【単眼複眼】複数離脱 思惑外れる 経済界と連携不足 参加者内に温度差


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 県政与党の過半数割れを目標に掲げ結成した「21令和の会」が方針を転換した。6月の県議選に照準を合わせ、玉城デニー知事を支える「オール沖縄」勢の切り崩しを狙ったが、幹事に就任予定だった複数のメンバーが離脱したことで、もくろみは外れた。メンバー離脱の背景には、知事側近によるメンバーへの働き掛けのほか、自民を支持する経済界との連携不足も影響しており、県議選に向けた水面下の攻防が始まっている。

 観光関連企業の幹部も出席した4日の幹事会には予定よりも数人少ない約10人が出席した。関係者によると、幹事長の安慶田光男氏は「令和の会として観光関係の予算を獲得していこう」などと呼び掛けた。安慶田氏は自身が持つ菅義偉官房長官との「パイプ」を政治家に引き継ぎたいとの意向を示したという。

 令和の会の方向性を巡っては、参加者の間で温度差がある。副会長の平良朝敬前沖縄観光コンベンションビューロー会長は会合後、記者団に「(趣旨は)野党で過半数を取りにいくことだ。(与党の中にも)今の執行部に対して非常に不満を持っている議員もいる。そういった是々非々の皆さんに理解してもらい、自民、公明、無所属議員も含めて過半数の25議席を取ることを共有しましょうということだ」と述べた。あくまで県議選での議席過半数獲得にこだわりを見せた。

 ただ、複数の関係者によると、安慶田氏は複数の幹事候補が離脱したことなどを受けて周囲に「もう令和の会としての活動は無理だ」と語るなど事実上の活動停止に踏み込んでいる。

 経済界を取りまとめている仲井真弘多元知事らとの連携を巡っても一部のメンバーから「調整がまったくされていない。このままでは信頼関係を築けず、保守が分裂する可能性がある」(経済界関係者)との批判がある。実際、関係者の一人は「仲井真氏らとの合同会議を開くべきと提言したが実現できていない。それでは乗れない」と語るなど、経済界との連携不足を指摘する。

 今回の一連の動きについて玉城知事に近い与党幹部の一人は「選挙資金ほしさに安慶田氏側と接触した保守中道系の議員もいるが、彼らが取り込まれることはない。何より玉城知事がいないと勝てないことは本人が一番分かっている」と冷静に語った。台風の目になることを図った令和の会だが、今回の方針転換により、県議選への影響は限定的になりそうだ。 (吉田健一)