お土産の定番「元祖紅いもタルト」にも影響…沖縄県産紅芋、病害で生産減 菓子メーカー苦慮


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サツマイモ基腐病の被害を受けて腐敗したサツマイモの断面(県病害虫防除技術センター提供)

 サツマイモを腐らせる新たな病害「サツマイモ基腐(もとぐされ)病」が久米島など沖縄県内の主要産地で発生している。サツマイモの一種である紅芋でも被害が出ており、生産量の減少で県内の菓子メーカーは原料の確保に苦慮している。御菓子御殿は看板商品の「元祖紅いもタルト」の製造を一部休止する。サツマイモ基腐病の研究は進んでおらず、県は実態の調査を進めている。

 サツマイモ基腐病は本島南部の畑で2018年に国内で初めて発生を確認した。病原菌はカビの一種で、サツマイモの茎や茎付近を黒く腐らせる。茎の部分から菌が侵入して、サツマイモ全体に腐敗を広げる。東アジアや世界各地で確認されている。

 18年に県内で確認されて以降、鹿児島県や宮崎県でも被害が出た。県内では本島各地や伊平屋島、久米島、宮古島、石垣島などで確認された。久米島では特に被害が大きいという。

 効果的な農薬は見つかっていないため、県糖業農産課の担当者は「基本的な栽培技術や防除対策を指導している」と説明する。土壌中に菌が潜んでいる場合が多く、菌が付着した苗や種芋などを他の農場に持ち込むと、伝染する可能性がある。

 紅芋を含む県内サツマイモ生産量は減少傾向にあり、サツマイモ基腐病の発生で19年産は前年を下回る見込み。県によると、サツマイモ基腐病が発生したサツマイモが市場に出回ることはなく、食べても問題はない。
 (当銘千絵、石井恵理菜)