当初有力視されたコードも明確な痕跡なく 首里城火災の原因が特定できない理由


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首里城火災の調査結果を公表する那覇市消防局の山城達予防課長(右から2人目)=6日、市銘苅の那覇市消防局

 那覇市消防局は6日、首里城火災の原因は「不明」と発表して調査を終えた。分電盤など電気系統設備が集中する正殿1階北東側が火元とみられるが、銅も溶ける1千度以上の火災熱が発生したため、物証を得ることはついにできなかった。正殿北東の状況から発光ダイオード(LED)ライトのコードと延長コードが出火原因として有力視されたが、結果として明確な痕跡は確認できなかった。出火時の警備員らの初動対応も原因特定に影響した。

 正殿内は午後9時半には、防犯カメラなど一部機器を除いて電源が落ちる設定となっていた。カメラ以外に通電していたのは分電盤外側に設置されていたコンセントだ。コンセントには延長コードが接続され、プラグにはLEDライトのコードが挿入されていた。

 市消防によると、鉄製の配管内に通された配線は仮に内部でショートしても外部に延焼する可能性は低い。そのため正殿北東で唯一、配管を通さずに露出していた延長コードとLEDライトのコードが出火原因として有力視された。しかし、県警科学捜査研究所で鑑定しても損傷が激しく、特定には至らなかった。

 市消防は当初、正殿北東を重点的に調べた。その後は北側全体を12区画に区切って堆積物を詳細に調べたが、有力な物証は発見できなかった。市消防関係者は「いくら木造であっても、ここまで燃え尽きたのは初めての経験だ」と語った。

 一方で出火当時、警備員らはマニュアルに反して、奉神門でのモニター常時監視を一時怠っていた。そのため自動火災報知設備が作動した際、初めにどの区画から出火したかを確認していなかった。市消防の山城達予防課長は「出火場所の情報がなく、防犯カメラや自動火災報知設備などからも情報が得られず、非常に難しかった」と話した。