「男女平等」「多様性」の言葉を疑問視する市議に識者は認識不足を指摘


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 宜野湾市議会の与党議員の一部から条例名などに疑義の声が上がり、継続審査となった「市男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」案。市は県内の他の自治体の条例にある「男女共同参画」より、時代の流れに沿った文言や内容に仕上げたとしている。一方、一部の与党議員は「男女平等」「多様性」という言葉を掲げることに懐疑的な姿勢を見せる。条例案策定に携わった識者は「男女平等はそもそも憲法で保障されている」と述べ、議員の認識不足を指摘している。

宜野湾市役所(資料写真)

■理念条例

 条例案は、全ての人が性別などに関係なく平等で多様性を認め合い、人権が保障されることなどを掲げる理念条例だ。市や市民らの責務を定め、社会全体で暴力や人権侵害行為の禁止をうたう。国籍や性別などに関する差別を助長するヘイトスピーチの禁止も県内で初めて盛り込んだ。罰則規定はない。

 国の男女共同参画社会基本法(1999年施行)や第3次市男女共同参画計画「はごろもプラン」などに基づいて策定している。県内では、男女共同参画に関する条例を沖縄県が2003年に、宜野湾以外の10市は05~18年に既に制定、施行している。

■「勘違いされる」

宜野湾市が提案した議案を審査する市議会の総務常任委員会=6日、同議会

 「男女平等の言葉を使うと、『男と女は平等ではない』と勘違いする人もいる」「男女共同参画を推進している中で男女平等はなじまないのではないか」

 一部の与党議員らは、当初案の「男女共同参画条例」から文言が変わり、平等や多様性という言葉が使われていることにこだわっていた。

 市は基本法や他自治体の条例などを参考にし、「いまだ男女共同参画の認知度が低いため、内容がイメージしやすいタイトルとしている」と説明している。

 別の与党議員から、県内の他の議会でヘイトスピーチに関する議論が十分でないことや、浦添市で議会提案に至らなかった性の多様性に関する条例案との関連を気にする声もあった。

■憲法で保障

 条例案は松川正則市長が昨年5月、学識者や弁護士らでつくる市男女共同参画会議(会長・新垣誠沖縄キリスト教学院大教授)に諮問し、同7月に答申を受けた。同8月にパブリックコメント(意見公募)を実施し、議会上程に至った。

 新垣教授は「男女平等は憲法で保障されているもの。県外では多様性をふんだんに盛り込んだ条例もある」と一部与党議員の認識不足を批判する。

 今後、条例案は議会閉会中も含んで審査される流れだ。市は可決の場合は周知の実施後、7月1日施行を目指していたが、先行きはまだ見えない。

(金良孝矢)