バズる構図“地獄絵図” 巧妙化するフェイクに対抗するために必要なことは 津田大介氏(ジャーナリスト) 報告・人権啓発集会から


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 私は普通のジャーナリストと出自が違う。父親は社会党副委員長の高沢寅男さんの秘書をしていた。大学ではネットと差別の問題を追い掛けた。ネット上では差別、扇動が巧妙で、フェイクを作る技術は日々向上している。これが差別に使われるとどうなるか。

 負の側面だと、ポストトゥルースが注目される。EU離脱やトランプ米大統領誕生などで、客観的事実よりも感情的な訴えが世論形成に影響した。事実の軽視でフェイクニュースが増え、政治家の開き直りが起こる。今もそんな状況だ。新型コロナウイルスも差別扇動にも使われている。

 新型コロナウイルスは生物兵器説が流れた。武漢に研究所があるのは事実。ただ人工的に作られた細菌兵器であれば、DNAに細工があるので調べられる。専門家が調べても細工はなかった。デマは危機の時に広がる。関東大震災の朝鮮人、東日本大震災の中国人窃盗団と同じ。善意のふりをした差別扇動が流れる。

 情報は印象操作されている。フェイク、ねつ造ではなくても、どこを切り取るかで印象が操作される。沖縄の基地問題でも、あいちトリエンナーレでも起きた。

 ネットでバズる記事は「主張するマイノリティー」や彼らを擁護する人をたたく記事だ。アクセス数や広告料をかせぐためにそういう記事が量産される構造がある。これで沖縄がターゲットになる。なかなかの地獄絵図だ。

 フェイクが巧妙化する中で、情報源は三つ確保した方がいい。ネット、紙、人・体験。フェイクニュースやヘイトスピーチは人類が抱える業のようなものだ。これについて考えることは人類の持つ脆弱(ぜいじゃく)さと向き合うことなのかもしれない。だからこそ人権侵害の問題に対処できるように考える必要がある。