「IT」「健康」「イノベーション」がキーワード 嘉手納以南の基地返還跡地利用で中間まとめ 政府懇談会で議論さていることとは…


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
松川正則宜野湾市長(手前右)が説明する米軍普天間飛行場の概要などに耳を傾ける「基地跡地の未来に関する懇談会」メンバーら=2019年10月、宜野湾市役所

 【東京】今後返還が見込まれる在日米軍施設・区域の跡地利用に向け、核となる施設や機能の可能性を検討する内閣府の「基地跡地の未来に関する懇談会」は、2月28日に行われた5回目の会合で中間取りまとめの議論に入った。過去の議事要旨からたどると、「IT」「健康」「イノベーション」「人材育成」といったキーワードが浮かぶ。これらと「沖縄らしさ」をいかに結び付けるかがポイントになりそうだ。

 議論が絞られたのは昨年12月の第3回会合だ。過去に委員が挙げた国内外の七つの先行事例が示された。

■日本のメディコンバレー

 関心を集めたのがデンマーク東部を中心に広がる「メディコンバレー」だ。デンマークは情報通信技術(ICT)と医療を融合させ、国民の診療情報や生体サンプルをデータベース化している。進出企業は研究のために膨大なデータを使えることが評価され、生命科学分野の研究機関や製薬会社の集積が進む。

 日本にはDNAに関する大規模なデータベースが無く、日本企業もメディコンバレーに進出している実態がある。「日本人のDNAで創薬研究を行い、課題である医療費問題の解決を進める点からも、(跡地利用の)いい参考事例だ」との声が上がった。

 県内では琉球大が西普天間住宅地区跡地でバイオバンクの構築を進める。委員からの評価も高く重要なポイントになりそうだ。

 ベンチャー企業が集積するイスラエルのテルアビブでは「ナイトアクティビティが非常に盛んだ」との指摘もあった。特に「アクティブに動く若者ほど、(人的な)交流を求める」との分析もあり、先端産業を伸ばす観点からも夜のエンターテインメントの構築が課題となる。

■IRでも議論

 自治体に意見聴取した昨年10月の会合では、カジノを含む統合型リゾート(IR)を巡る議論があった。

 那覇市との面談では委員から「MICEは会議場単体では需要の確保が難しい。IRと連携した施設と競合すれば需要を持って行かれる」との懸念が出た。かつて地主会がMICEを含む構想をまとめたことを受けた指摘だが、市側は那覇軍港へのMICE整備は検討し直す姿勢を見せた。

 浦添市との議論の際ではIR整備に慎重な声も出た。ある委員は、県がカジノに反対する姿勢を示す中で「そもそも沖縄にIRが必要なのかどうかの議論から要する」と指摘。「子どもたちが夢を持つ跡地利用を考える上では距離感がある」と慎重姿勢を示した。

 議事要旨では発言者を公表していない。懇談会は笹川平和財団海洋政策研究所所長の角南篤氏を座長に、吉本興業会長の大﨑洋氏、建築家でSCAPE代表の塩浦政也氏、早稲田大准教授の玉城絵美氏、アクセンチュア・イノベーションセンター福島センター長の中村彰二朗氏の5人で構成する。
 (知念征尚)