上下黒のスーツ姿で白いタオルのねじり鉢巻きを締めた男性たちが行列を作り、鮮やかな緑色の生地に赤で「五穀豊穣(ほうじょう)」の旗字が踊る。旗を掲げクイチャーを踊り集落を練り歩く姿を、地域の子どもたちやお年寄りが手をたたいて笑顔で見守る。
毎年旧暦8月以降の最初の甲午(きのえうま)の日、宮古島市平良の池間島と、同島からかつて分村した平良西原、伊良部佐良浜地区の人たち、いわゆる「池間民族」が執り行う伝統の豊年祈願祭「ミャークヅツ(宮古節)」の光景だ。各集落で行事の在り方が違う中、西原地区では4日間ある行事の「中日」の2日目に「五穀豊穣」と自治会の旗を掲げて文字通り五穀豊穣と、子孫繁栄を祈願する。
かつては日の丸旗だけだったが、45年ほど前から「五穀豊穣」「西原部落会」の旗を掲げるようになったという。管理・保存するのは西原自治会だ。会長の渡久山秀隆さん(69)は「旗自体の歴史は浅いかもしれないが、先人たちの思いが詰まっており、現在まで掲げ続けている」と語る。
祭り初日、旗は地域の女性たちが祈りをささげる御獄に置かれ、2日目のパレードでの演舞を経て、最終日の4日目まで集落の中心に飾られる。その間、地域の人たちが旗に触って験担ぎをするといい、縁起物としての役割もある。渡久山さんは「世替わりし、少子化で行事に参加する人も旗持ち係をする人も減っているが、地域の絆を大事にして、みんなで協力して続けていきたい」とほほえんだ。
2年連続で旗持ち係を務めた比嘉健栄さん(54)は「旗持ちはパレードのメインの一つ」と誇らしげ。
「五穀豊穣の神様に見せるために高く掲げることができたら、地域のために協力できたという達成感があるよ。足はパンパンになるけどね」と笑顔で話した。
(真栄城潤一)
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<メモ>
【旗字】「五穀豊穣」「西原部落会」
【長さ】約6メートル
【重さ】約25キロ
【演舞】ミャークヅツ(宮古節)