3年間の成果堂々と 国立劇場おきなわ 組踊研修生が修了公演


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 国立劇場おきなわ第5期組踊研修生の修了発表会「花売の縁」が5日、浦添市の同劇場で開催された。研修生として6回目となる最後の舞台は、新型コロナウイルス感染症拡大リスクの低減を図る観点から急きょ一般客の入場を制限しての公演となった。9人の研修生が人間国宝をはじめとする講師らを前に、3年間の研修の成果を全力で披露し、有終の美を飾った。

猿引(前列左端・玉城慶)の猿回しに見入る乙樽(前列右端・岡本凌)と鶴松(高井賢太郎)。後列地謡の研修生は(左2人目から)町田倫士、澤岻安樹、金城亮太、兼箇段翔=5日、浦添市の国立劇場おきなわ

 高宮城親雲上作とされる「花売の縁」は、乙樽(岡本凌)と鶴松(高井賢太郎)母子が夫の森川の子(下地心一郎)を捜す親子や夫婦の情愛を描いた物語。猿を連れた猿引(玉城慶)や、家族が再会するきっかけをつくる薪木取(比嘉克之)が登場し、作品を盛り上げる。

 岡本は花笠をかぶり登場した冒頭、体の線の細さに加え表情が見えづらいこともあり棒立ちのような印象を受けた。しかし、終盤の森川の子に語り掛ける場面では、士族の妻としての気高さを感じさせる立ち姿と、柔らかな表情を見せ今後の女形としての活躍に期待を持たせた。

 下地の森川の子は、「笠の段」の舞や表情からみなぎる気迫に成長を感じ、目を見張らされた。

 比嘉は、実年齢を感じさせない貫禄ある老け役で、演技力の高さを感じさせた。

 高井は最もよく通る声と真剣さで観客を引き付け、玉城のはつらつとした猿引は目鼻立ちの美しさが目を引いた。

 歌三線は、金城亮太、澤岻安樹、兼箇段翔が、体調不良で出演できなかった新垣勝裕の分もカバーするように気持ちのこもった歌を聴かせた。独唱では、金城の「立雲節」が聞き応えがあった。

 箏の町田倫士は、堂々とした演奏で作品を彩った。

 研修の地方主任講師の城間德太郎は「素直な生徒たちで、教えた通りにやってくれた」と目を細めた。

 立方主任講師の宮城能鳳は「集中して演じており上出来だった。芸を身に付けるだけでなく、芸に取り組む姿勢が身に付いている」と今後の活躍にエールを送った。

(藤村謙吾)

乙樽と鶴松に森川の子との思い出を語る薪木取(比嘉克之)
森川の子(右端・下地心一郎)に一緒に家に帰るよう語り掛ける乙樽(左から2人目)