弱冠14歳、世界で頭角 パリ、ロス五輪に照準


弱冠14歳、世界で頭角 パリ、ロス五輪に照準
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 自身初の国際大会となった2月の重量挙げアジアジュニアユース選手権で優勝を果たした女子49キロ級の比嘉成(せい)(大宮小―大宮中2年)。弱冠14歳で国内トップレベルの重量を挙げ、世界で頭角を現した。武器は幼少期からの積み重ねで体得した滑らかなフォーム。抜群の将来性を備え、既に4年後のパリ五輪、そして8年後のロサンゼルス五輪出場を見据える。2008年の北京五輪女子48キロ級で入賞を果たした大城みさきさん(35)を育てた父・敏彦さん(48)=本部高校重量挙げ部監督=との二人三脚で、高みを目指す。
 (長嶺真輝)

父・敏彦さんが作ったおもちゃのバーベルを持ち上げる当時2歳の比嘉成(手前)と兄の力=2007年12月、那覇高校(敏彦さん提供)

■重量挙げごっこ

 父が指導する高校の練習場が、幼い頃の遊び場だった。シャフトはステンレス製の棒、重りは円状にかたどったビート板。敏彦さんお手製のバーベルで学生の動きをまねる「重量挙げごっこ」が、競技を始めるきっかけとなった。小学校に上がると、先に大会に出始めていた二つ違いの兄・力(16)=本部高1年=が、好成績を残してお菓子が入ったメダルをもらっているのを見て「自分も欲しい」とやる気に火が付いた。
 小学6年の時に初開催された全国小学生交流大会44キロ級の初代女王に。中学1年で全国女子中学生選手権で3位、昨年は同大会49キロ級で頂点に立った。2月のアジアジュニアユース49キロ級ではスナッチ、ジャーク、トータル全てで日本中学記録を更新。トータルの159キロは、一般を含めて日本一を決める昨年の全日本選手権で3位の選手が挙げた重量と同じ記録で、既に国内トップクラスの力を備える。

■効率性で挙げる

 身体の成長を阻まないよう「今はほとんど筋トレはしていない」。強さの秘けつは、選手として高校、大学で日本一に立った敏彦さんとオリンピアンの大城さんが10年以上をかけて磨き上げた「最低限の力で挙げるフォーム」にある。
 大城さんは身長145センチと小柄だったが、S字を描くようにあえてバーベルを振り回す意識で引き上げることで、自重とバーベルの重さを利用し、なるべく筋力に頼らずに国内トップの記録を残した。かかとが高いものが常識とされたシューズを平らにし、足裏全てを使って体を支えられるようにするなど、実験を重ねて独自のフォームを形づくっていった。
 これらの理論の凝縮を実践しているのが成だ。足底を使う独自の考え方に沿って昨年からは足袋を履いて試技に臨む。既に競技歴は10年以上で、敏彦さんは「元々の能力が高い訳ではないが、バーベルの扱いが上手」と太鼓判を押す。姉のような存在で、助言をもらっている大城さんも「小さい頃からやっていて、力を効率的に使うフォームが自然と体に染み付いている。どこまで記録が伸びるか楽しみ」と将来性に目を細める。

五輪出場を夢見る比嘉成(左)と父の敏彦さん =2月25日、本部高校

■夢は五輪

 指導者である父に対し「他の指導方法とは違うけど、父が理想とするフォームができればちゃんと上にいける」と信頼は厚く、初めての国際大会で表彰台の頂点に立ち「自信が付いた」と一皮むけたようでもある。フォームの完成度を上げ、今夏の全国女子中学選手権でスナッチ80キロ、ジャーク90キロを挙げてトータルを含めた3種目で再び日中新を樹立することが直近の目標だ。
 同世代の同じ階級には、共にアジアジュニアユース選手権49キロ級に出場した川﨑奈々紗(京都・栗田中2年)や山下笑佳(石川・飯田高1年)ら日本女子重量挙げ界のホープがそろう。切磋琢磨(せっさたくま)してさらなる成長を続け、「高校、全日本でも活躍し、パリ、ロス五輪に出場したい」と将来の夢を力強く語る。敏彦さんも「五輪を目指さないとやってる意味がない」とハッパを掛ける。世界最高峰の舞台に立つ日を夢見て、親子鷹の挑戦は続く。