沖縄から世界見据える 自転車BMX 県内唯一プロ 漢那、強化指定狙う


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世界大会での優勝を目指し、技に磨きをかけるBMXプロライダーの漢那史哉=10日、那覇市

 東京五輪の新種目として注目を集めている小型自転車「BMX」。国内外の大会に参戦する県内でただ一人のプロライダーがいる。2010年に当時最年少の18歳でプロデビューを飾った漢那史哉(27)だ。13年に一線を退いたが「目標に向かい頑張る背中を子どもに見せたい」と翌年に復帰。沖縄を拠点に奮闘している。

 平面で自由自在にBMXを乗りこなしダイナミックな技を繰り出す「フラットランド」を中学生の時に初めて見て引かれ、競技を始めた。独学で学びプロデビューを果たした。13年に息子が生まれたことを契機に「BMXだけでは家族を支えられない」と一線を退いた。だが、長男が1歳になったころ「子どもを理由にBMXをやめたなんてかっこ悪い。どうせなら目標に向かって頑張る父親の姿を見せたかった」。1年間のブランクを経て再び競技にのめり込んだ。

 前輪と後輪の真横に付けた「ペグ」に足を掛けて回ったり、両手を離して回転したりとフラットは体幹とバランス感覚が求められる。「1週間乗らないだけで回転の感覚を取り戻すことが大変」な競技だ。当然、復帰当初は感覚を取り戻すことはもちろん、技術的にも「全然だめだった」。

 だが、「やっぱりBMXが好きだ」と再確認する機会でもあった。そこから猛練習を開始。世界中の選手が参加する「フラットアーク ファイナル」(16年)で12位、「アジアバトル フィリピン」(17年)で優勝、「JFBF 全日本プロクラス」(19年)で4位と結果を残してきた。

 東京五輪では速さを競う「レース」と、台などを使い、ダイナミックなジャンプ技を競う「パーク」が採用される。

 一方のフラットはレースやパークに比べると、国内での知名度はまだまだだ。だが、競技レベルはフラットが盛んな欧州にも引けを取らない。19年からは日本自転車競技連盟がフラットの選手の強化指定を開始するなど下支えの環境も整いつつある。経験や技術が求められるフラット選手の全盛期は20~30代とされており、漢那も強化指定を狙う。

 「ことしは全日本大会の3戦全てに出場し、世界大会での優勝も狙いたい」。五輪新種目として注目度が高まる中、フラットで沖縄から世界の頂きを見据える。
 (上江洲真梨子)