支え力に夢を追う 宮里中・瀬名波 強豪の米子北高(鳥取)で挑戦


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 卒業シーズンとなる3月、県内中学校で有望視されてきたサッカー選手の一部が、さらなる活躍の場を求めて県外校へ進学する予定だ。関係者によると、今年は「40人ほど」が県外へ挑戦する。沖縄市立宮里中3年で、FC琉球ジュニアユース所属のFW瀬名波丈一郎=沖縄市=は、鳥取県の強豪校である米子北へ進む。「大事な時に点を決められる選手になりたい」と新天地での活躍を誓う。 (喜屋武研伍)

新天地でのさらなる活躍を誓う瀬名波丈一郎=16日、沖縄市の若夏公園(喜屋武研伍撮影)

 県教育庁の2016年の調査によると、高体連に加入していない高校野球を除き、サッカーの県外流出は41人で最多。2番目に多いバスケットボールの12人と比べても3倍以上の数だ。その後も毎年平均で40人ほどが出ているという。

 県外へ飛び出す理由は、県内のクラブチームが増えて遠征が多くなり、県外指導者が沖縄の選手を高く評価する機会が増えたことなどが挙げられるという。選手側のメリットとしては学費の免除のほか、監督の異動がなく一貫した指導が受けられることが挙げられる。

 ■俊足の点取り屋

 瀬名波は小学2年時に、学童の先輩に誘われてサッカーを始めた。前線から2列目まで器用にこなし、強烈な右足のキックに加え左足も使うことができる。加速力のあるスプリントが武器で、何度もゴールを脅かしてきた。中学からFC琉球ジュニアユースに所属し、昨年10月の県ユース(U15)選手権決勝では、豪快に2得点を決めて優勝に貢献した。

 今でこそ頼もしいストライカーだが、これまで悔しい思いを幾度もしてきた。試合でチャンスを決められずふがいない思いをすると、帰りの車で声を殺して泣くことも。家に着くとすぐさまボールを片手に近くの公園へ向かう。外したシュートを思い出し、「狙ったところにいくまで」何度も何度も蹴り込んだ。

 進学する米子北高は、鳥取県内の全国選手権県予選で10年間負けなしのトップチーム。3年前の全国選手権では8強入りを果たした。前に突破力のある選手を置き、ボールを集めてゴールを狙うスタイルだ。俊足の瀬名波に「合う」と確信し、進学を熱望した。

 ■感謝を胸に

 母の里美さん(48)は経済面の心配もあって反対したが、「もう試合を間近で見られなくなるという寂しさもあったのかもしれない」と胸中を明かす。

 しかし瀬名波の熱意は変わらず、進路希望調査のアンケートにはいつも「米子北」が書かれていた。「本人がここまで頑張りたいと思うんだったら、背中を押してあげたい」と進学を認めた。

 FC琉球の練習は週に4~5回、転々とする練習場所へ両親が送迎してきた。月会費に加え、1回に7~8万円ほど予算がかかる県外遠征は、3年時だと年に5回はある。両親の苦労を知るだけに「自分で決めたことだから、家族に迷惑は掛けられない。不安があるなんて言えない」と自分を律する。

 高校は特待生で入学し、授業料は免除される。里美さんは「人として成長して帰ってくれれば」と見守るつもりだ。今春から始まる鳥取生活。まだあどけなさが残る15歳の瀬名波だが「早く選手権のメンバー入りしたい。一つ一つ目標を達成していく」と真剣に語る表情に、支えを力に変えて夢を追う強い覚悟がみえた。