難病患者が職員と二人三脚で生け花 華道連盟が病院に講師派遣、40年続く


社会
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職員に希望を伝えながら生け花を楽しむ人たち=1月、宜野湾市の沖縄病院

 宜野湾市の沖縄病院では体を動かしたり言葉を発したりするのが困難な人たちが毎月1回、生け花を楽しんでいる。車いすやベッドから生ける花材の位置や向きを伝え、職員やボランティアと二人三脚で個性豊かな作品を仕上げる。

 沖縄病院の療養介護病棟では筋ジストロフィーなど神経難病の患者が入院生活を送る。特別支援学校を卒業して数十年になる人もおり、余暇活動としてクラブ活動がある。このうち生け花は県華道連盟がボランティアで講師を派遣し、少なくとも1980年頃から約40年も続いているという。

 1月には8人のメンバーが参加した。古流松藤会沖縄支部長の長嶺絹枝さんを講師に職員やボランティアの8人が1対1で付き添った。メンバーは好きな花材と花器を選び、作品作りに取り掛かった。

 共同作業の第一歩は、最初に挿す花材の特定だ。言葉を発することができない人に、職員らは「どれからいきますか?」「これですか?」と一つずつ花材を手に取って見せ、表情、目や手の合図での返事を待つ。

筋ジストロフィーの患者たちが職員らと一緒に仕上げた生け花の作品=1月、宜野湾市の沖縄病院

 花材が決まれば花器の上にかざして見せて、生ける位置や向き、長さの希望を聞き、余分な茎をはさみで切って剣山に挿していく。

 50代の患者、宮里ルミ子さんは「曲がっている枝を手前に、もう少し右。外側に斜めに倒して、そう、そこに」と的確な言葉で意思を伝えるが「微妙な角度など伝え方が難しくてもどかしいときもある。でも頑張って生けてもらっているし、自分の思いとずれたことが逆に良くなることもある」と語る。

 宮里さんのように言葉は出ず、ベッドや電動車いすの上から笑顔と指でOKを伝える人、熟考しながらわずかな目の動きで「はい」「いいえ」を伝える人も。言葉や動きが少ない人は意思や人柄が分かりにくいが、伝える側と受け取る側の双方が粘り強く相手に向き合い、花器に挿される花が増えるごとに、個性が作品として姿を現す。同じ花材を使っても、作品の形状や雰囲気は人それぞれだ。

 作品は病棟内のあちこちに飾られ、多くの人の目を楽しませる。宮里さんは「植物の線をいかにきれいに見せるかを極めたい」と話し、職員の島田明子さんは「注目され、認めてもらえる機会になる。先生方の助言で新しい生け方を知り、みんなどんどん上達している」と目を細めた。
 (黒田華)