千葉女児虐待死、糸満市対応で情報共有の必要性強調 検証報告


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 【糸満】千葉県野田市立小4年の栗原心愛(みあ)さん=当時(10)=の虐待死事件を受け、一家が以前暮らした糸満市の対応を検証した市要保護児童対策地域協議会(要対協)の検証報告が25日、公開された。報告は、市が心愛さんや母親から話を聞いていないことや野田市に虐待情報を伝えなかったことを指摘。「虐待の危険性を踏まえて家族のアセスメントを十分に取り、支援や対応を検討し、転出先へケース移管する必要があった」と情報共有や連携の重要性を強調した。人材の専門職の確保や育成も求めた。市は同日、国と県へ報告し、市のホームページで報告書を公開した。

 報告では、ドメスティックバイオレンス(DV)と児童虐待は密接な関係があることから相談員を正規職員として配置することや、市教育委員会へのスクールロイヤー配置など7項目を提言した。市の再発防止策として、子どもや当事者から話を聞くことや、他市町村へのケース移管は文書で行うことを基本とした。受理会議や課内会議の記録を残すことでの組織的な判断も求めた。

 全体的な対応策では、子どもや保護者の印象を記録化し、情報を関係機関で共有する必要性を指摘。「DVや面前DVの知識とスキルが不十分」とし、研修会の開催や支援者のスキル向上も挙げた。

 学校では、気になる子どもの経過記録を残し、組織的な判断をして関係機関につなぐことや、職員間で相談できる組織体制の構築などを求めた。

 市は提言の一つである子ども家庭総合支援拠点と子育て世代包括支援センターを2020年度中に設置する。市教委はスクールロイヤーの配置も含めて検討する。

 心愛さん一家は17年夏まで糸満市で暮らした。要対協は19年2月から20年3月まで代表者会議5回、実務者会議を6回開催し、対応を検証した。

家族状況の検証必要 識者談話・山野良一沖縄大教授

 市要保護児童対策地域協議会(要対協)など、関係機関の連携を図ろうとしている点は評価できる。専門職を正規職員として配置し、支援の充実を図ろうという提言も評価できる。検証報告全体として虐待ケース対応の基本を振り返り、頑張ってまとめた印象だ。

 一方で、もう少し突っ込んでも良かったと思う部分もある。糸満市に居た時、家族がどういう状態にあったのかが見えてこない。当時の家族の状況や母親の心理について、きちんと検証・評価しても良かった。母親のSOSを聞けなかった市の不十分さが出てこない。

 千葉県の報告書を読むと、柏児相や野田市が親族にコンタクトできていたら、命を救うことができたかもしれない。そうした意味では、転居時に最初の相談者である親族への聞き取りを糸満市は行い、その記録が野田市に伝わっていれば良かったのではないだろうか。そうした点も糸満の検証報告にはなかった。

 要対協で要保護、要支援のケースがあれば関係機関が集まって、情報交換をしたり方針を決めたりすることがとても大事だ。全市町村がやらなければいけない基本で、報告書でそれがあらためて示されたことは評価できる。
 (児童福祉)