「チャンギ、仁川がライバルに」 那覇空港第2滑走路の利用開始 沖縄経済の「起爆剤」と期待も山積する課題とは…


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26日に利用開始する那覇空港第2滑走路。航空路線の拡充で県経済の発展につながることが期待される=15日

 アジアに近い地理的優位性を有する那覇空港で26日、新たな滑走路が利用開始される。現在の約1・8倍の24万回の発着が可能となることで、沖縄を中心とした人や物の流れは活発化し、県経済の新たな起爆剤となることが期待されている。ただ、新規路線の就航も見込まれる一方、空港ターミナルの受け入れ体制拡充や、2次交通の利便性向上など、解決すべき課題も残る。世界的に新型コロナウイルスの感染が拡大する中、厳しい環境を乗り越えてアジアを代表する空港になれるかが注目されている。

広がる可能性

 「沖縄の持つ潜在力が、これまで以上に発揮される」。りゅうぎん総合研究所の久高豊専務は、第2滑走路の利用開始で県経済が大きく前進すると分析する。那覇空港の滑走路で安定的に運用できる発着回数は年間13万5千回とされるが、2018年度の発着回数は16万4千回。観光客数が右肩上がりで伸び続ける中、過密状態での運航による慢性的な遅延などが課題となっていた。久高氏は「滑走路が1本のままでは沖縄の高いポテンシャルを十分に生かせなかった」と指摘する。

 第2滑走路の利用開始が発着回数の拡大を実現させ、スムーズな運航が可能となる。同時に、新規路線の受け入れも可能になる。新型コロナ感染拡大の影響で海外路線は25日までにゼロになったが、沖縄への就航に関心を示す格安航空会社(LCC)も複数社あり、第2滑走路の利用開始を機にいずれ持ち直すとの見方もある。久高氏は「沖縄の経済が一つ上のレベルに上がるきっかけとなる」と力を込める。

魅力向上への課題

 第2滑走路の完成で那覇空港の利便性が向上する一方、ターミナル施設のさらなる充実や2次交通の整備など、改善が求められる項目もある。沖縄観光総研の宮島潤一代表は「シンガポールのチャンギ空港や韓国の仁川空港など、これからは海外の空港がライバルになる」と指摘する。

 海外の主要空港では、夜間に到着した場合でもターミナル内で長時間の滞在ができるように宿泊施設など多彩な施設が整備されているという。夜間でも利用できる公共交通機関の設置も求められるといい、宮島氏は「海外の事例を研究して、航空会社から選ばれる空港になる必要がある」と語る。

 現在は新型コロナの影響で観光客が激減しているが、終息後を見据えて南アジアや欧米からの路線誘致を進めることも重要となる。宮島氏は「一度、立ち止まって観光政策を見詰め直す作業もできるはずだ。関係機関が泥臭くプロモーションをして、路線の誘致を進めてほしい」と願った。

物流拠点化を推進

 那覇空港の2千キロ圏内には香港や北京などアジアの主要都市が位置しており、物流拠点として重要な役割を果たすことも期待される。しかし米中貿易摩擦や新型コロナの影響で物流が停滞し、那覇空港を発着する貨物便は運休・減便を余儀なくされている。

 物流に詳しい琉球大の知念肇教授は「現在は厳しい状況にあるが、第2滑走路が完成した那覇空港を拠点に、今後は新たな施策を進められるはずだ」と期待感を示す。

 東南アジア諸国連合(ASEAN)など沖縄に近接するエリアでは経済成長が続き、日本との交流促進も見込まれる。那覇空港はアジアと日本本土の中間地点として、さまざまな場面で活用できる。知念教授は「沖縄の地理的優位性は揺るがない。現状の課題を検証することで、物流拠点としての強みを発揮できるはずだ」と強調した。
 (平安太一)