木材確保の課題クリア 首里城工程表 全体の再建見通せず


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 政府が首里城正殿などの再建に向けた工程表を決めた。多くの県民に衝撃を与えた昨年10月31日の焼失から5カ月を経て、首里城は早期の復活に向けた大きな一歩を踏み出す。

 再建に向けた課題は多くあった。当初危惧されたのは木材の調達だった。前回復元時に使われたタイワンヒノキは伐採が禁止されており、大径材の確保が課題だった。国産ヒノキやカナダヒノキの確保のめどがついたことが工程表の早期取りまとめにつながった。

 米軍普天間飛行場の移設問題では民意を無視して辺野古の新基地建設工事を進めるなど「強権的」と反発を呼んでいる菅義偉官房長官の案件となったことも、首里城の再建については省庁間の壁を越えた連携につながった。ただ背景には、基地問題で強権姿勢に映る印象を和らげたい思惑もにじむ。

 一方、設計には2年かける。前回復元時の設計資料が残っていることから大幅な前倒しを期待する見方もあったが、結果的には前回復元時の3年から1年の短縮にとどまった。国交省は「スプリンクラーや防火水槽など防火設備を盛り込む必要があった」と話す。

 正殿の再建には一定のめどが立ったが、北殿や南殿など焼失建物全体の再建時期はいまだ見通せない。県や那覇市などに寄せられた寄付金の活用策や、管理者の県による管理の在り方の検証を求める声も強く、課題も多く残っている。
 (知念征尚)