相次ぐ虐待の防止へ 子ども権利条例 実効性のある施策急務


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<解説> 子どもを虐待から守る「県子どもの権利を尊重し虐待から守る社会づくり条例」が成立した。虐待につながる体罰や心身を傷つける行為を禁じることにとどまらず、尊厳が重んじられ適切に養育される権利など子どもの利益を守ることを県民全体の責任として掲げた。

 条例制定の背景には、県内で児童虐待相談件数が増加傾向にあるほか、近年、全国的に虐待死事件が相次いだことがある。さらに制定に向け、知事が設置した専門家でつくる万国津梁(しんりょう)会議の意見が反映され、より広い視点で子どもを被害から守る社会づくりを目指して「子どもの権利」を定めた。虐待だけでなく、いじめや差別をなくす観点からも「子どもの権利」を盛り込んだ意義は大きい。

 ただ、子どもの権利の定義に関しては識者から「抽象的だ」との意見も漏れる。1989年に国連で採択された子どもの権利条約は生命や生存、発達の保障を規定。「生きる権利」「育つ権利」「守られる権利」「参加する権利」を4原則とする。県外の自治体では保障される権利として16項目にわたり明示するなど、内容は具体的だ。

 虐待防止に関しては、条例制定前にも県はさまざまな施策に取り組んでいる。条例制定で何が変わるのか。生きた条例にするためにも県には、市町村との連携の在り方や「子どもの権利」の啓発など、実効性のある教育や施策に急ぎ取り組むことが求められる。
 (謝花史哲)