首里城再建工程表全文


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首里城正殿

 首里城の再建策を話し合う政府の関係閣僚会議が27日に決定した再建工程表全文は次の通り。

 首里城正殿などの復元に向けた工程表(全文)
   2020年3月27日 首里城復元のための関係閣僚会議

 政府は、「首里城復元に向けた基本的な方針」(2019年12月11日首里城復元のための関係閣僚会議決定)に従って、国営公園事業である首里城の一日も早い復元に向けて、沖縄県や地元の方々のご意見を伺いながら、予算措置を含め、政府として責任を持って取り組んでいるところである。
 また、この基本的な方針に基づき、これまで復元に携わってきた沖縄の有識者の方を含めた技術的な検討の場として、内閣府沖縄総合事務局に「首里城復元に向けた技術検討委員会」を設けたところであり、同委員会において、国土交通省などの関係省庁と連携しつつ、沖縄県民の意見を十分反映できるよう沖縄県の参画も得ながら検討が進められ、昨年12月から本年3月までに全9回にわたる議論の成果として、「首里城正殿などの復元の工程表策定に向けた技術的検討に関する報告」が取りまとめられた。
 この報告も踏まえて、関係省庁において検討を進め、首里城正殿等の復元に向けた工程表を以下の通り策定する。

 1・基本的な考え方

 前回復元時の設計・工程を踏襲することを基本とし、今般の火災を受けて、防火対策の強化および材料調達の状況の変化などの反映の観点を踏まえ工程を定めることとする。

 2・技術的課題に関する方針

(1)防火対策の強化
 (1)再発防止策の徹底
 二度とこのような火災による焼失を生じさせないよう、今後想定されるさまざまな出火要因に対応するため、文化庁の「国宝・重要文化財(建造物)などの防火対策ガイドライン」を踏まえた再発防止策を講じる。
 (2)火災の早期発見と迅速な初期消火の徹底
 今般の火災では、早期発見と初期消火を徹底することの重要性が確認されたことを踏まえ、首里城正殿に、最先端の自動火災報知設備などの火災の早期発見のための設備や、スプリンクラー設備などの迅速な初期消火のための設備を導入する。
 (3)消防隊による消火活動の容易化
 首里城が城郭に囲まれた特殊な地形に存在していることを踏まえ、消防隊が迅速に消火活動を行うことができるよう、消火用の水を城郭内に送るための連結送水管設備を導入する。
 (4)消火のための水源の確保
 「国宝・重要文化財(建造物)などの防火対策ガイドライン」などを踏まえて、貯水槽を増設するとともに、関係機関と連携して消火栓の新設を検討する。
 (5)世界遺産の構成資産である首里城跡の保護
 連結送水管設備の導入や貯水槽の増設などに当たっては、世界遺産の構成資産である首里城跡の地下遺構の保護を前提に設計・施工を行う。なお、この場合、前回復元時の工程から大きな変更は生じない。

(2)材料調達の状況の変化などの反映
 (1)木材の調達
 往事の首里城に使用されていたと推定されているチャーギ(イヌマキ)およびオキナワウロジロガシの活用が望ましいが、前回復元時と同様、これらの樹種は稀少材であり、大量の材の調達は困難な状況である。
 このため、首里城正殿の大径材は、前回復元時は樹種の特性などを考慮し、代替材としてタイワンヒノキの無垢材を使用したことなどを踏まえて、今回の復元においてもヒノキ科の無垢材を使用する。具体的な樹種は、調達可能性などを踏まえて、国産ヒノキを中心にしつつ、カナダヒノキ、調達可能であればタイワンヒノキも使用することを含めて、引き続き市場調査を行う。
 チャーギ(イヌマキ)およびオキナワウラジロガシについても、引き続き、調達可能かどうかの調査を継続し、使える材があった場合には、可能な限り活用する。
 (2)漆の調達
 漆については、前回復元時と同様、基本的に中国産漆を使用することとし、首里城の気候や風土にふさわしい質の品質確保を図るため、城郭内で試し塗りを行うなど、調合方法の検討を行う。

 (3)沖縄独特の赤瓦の製造・施工
 関係機関との連携により沖縄本島産の材料を調達するとともに、沖縄県内に蓄積、継承されている伝統技術の活用を図る。

3・首里城正殿などの復元に向けた工程表

 上記を踏まえて、首里城正殿について、令和2年度(2020年度)早期に設計に入り、令和4年(2022年)中には本体工事に着手し、令和8年(2026年)までに復元することを目指すこととし、北殿や南殿などを含め別添の通り復元に向けた取り組みを進めることとする。その際、復元過程の公開や観光振興など地元のニーズに対応した施策を推進する。
 その上で、今後、沖縄県や地元の関係者の意見も踏まえながら、速やかに首里城北殿や南殿などの復元に向けた具体的な検討に着手するとともに、「首里城復元に向けた技術検討委員会」において工程表を踏まえた詳細な検討を進める。