米軍基地、水際対策で「抜け穴」の恐れ 嘉手納空軍兵2人がコロナ感染 日本の検疫できず、行動歴も非公開


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 米空軍嘉手納基地第18航空団の空軍兵2人が欧州への渡航から戻った後、新型コロナウイルスに感染していたことが判明した件で、この兵士2人の行動歴や基地外に居住しているかどうかは不明だ。基地内の状況は基地外の地元が確認・検証するすべはなく、県民の目には「ブラックボックス」に映る。日本政府は水際対策として米国などからの入国を拒否する方針を固めたが、米軍基地は「抜け穴」となり得る。

 米軍基地内での感染状況を巡ってはさまざまな臆測が飛び交ってきた。遅くとも今年1月末から「基地内で感染者が出た」などといううわさが広まり、米軍がそれを否定する声明を出すこともあった。

 世界各国に基地を置き、日常的に兵士が行き来する部隊運用や、フェンスに囲まれた基地内の状況が把握しづらいことなどが背景にある。また、基地の外ではどこに何人住んでいるのか自治体が把握できていない。2012年以降、基地外で居住している米軍関係者の市町村別人口は非公表となっている。

 特に県が問題視してきたのは、日米地位協定に基づいて米軍は日本側の検疫を受けず、米国の検疫手続きが適用されるということだ。過去には不時着した米軍機から検疫を受けていない米兵が外出し問題となった。県は「日米地位協定の壁」と指摘し、改定を訴えている。

 県は、今回発覚した嘉手納基地内の感染者2人についても行動歴などを開示するよう求めている。砂川靖保健医療部長は「県民に不要の不安を与えないためにも正しい情報の開示を徹底した方がいい。デマのような情報が飛び交っている状況を防ぐためにも必要だ」と話した。

 米軍は県内の基地で感染者が見つかる前から軍人や軍属に注意喚起をしていた。25日には、感染拡大に歯止めがかかっていないとして、全世界の米軍基地や関連施設での保健衛生上の警戒レベルを5段階中で上から2番目の「レベルC(重大)」に引き上げた。

 警戒レベルの引き上げに伴って在沖米軍基地でも、基地外での行動は病院や銀行など日常生活に必要な場所に限定。感染例が相次ぐ基地外からのウイルス移入を警戒したとみられる。

 28日の嘉手納基地での感染発覚を受け、謝花喜一郎副知事は「世界中に感染が広がる中、軍人かどうかに関係なく気を付けなければならない。一緒になって感染防止に取り組みたい」と語った。
 (明真南斗)