ジュゴン、波照間と伊良部島周辺で「食み跡」か 最近付いたものも 環境省調査


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伊良部島周辺の海域で確認されたジュゴンの食み跡とみられる痕跡(環境省提供)

 【東京】環境省は31日、国の天然記念物ジュゴンの生息状況に関する2019年度の調査結果をまとめ、新たに波照間島や伊良部島周辺でジュゴンの食み跡と考えられる痕跡が見つかったと明らかにした。名護市の嘉陽沖では過去の調査を通じて初めて食み跡が確認できなかった。

 波照間島などでの調査は環境省が18年度に実施した関係機関への聞き取りで、ジュゴンの目撃情報があったことを踏まえて実施した。

 伊良部島ではジュゴンの食み跡とみられる痕跡が64カ所見つかった。食み跡が密集している場所が8カ所あった。地域住民への聞き取りでも、ジュゴンと思われる大型動物の目撃情報が4件得られたとした。

 波照間島では3カ所で食み跡とみられる痕跡が確認された。新たな葉の伸長が見られなかったことから、食べて間もない跡と推察されるという。聞き取りでも1頭の目撃情報があった。

 一方、いずれの地域でも個体の姿は撮影できていない。伊良部島で試験的に実施した、水中からジュゴンのDNAを検出できる新技術を使った調査でも、DNAは確認できなかった。

 環境省は食み跡から「ジュゴンが存在する可能性が高い」という有識者の見解を踏まえ、調査を続ける。

 一方、継続的に調査を続けてきた本島北部周辺3海域の調査では、18年度まで継続的に食み跡が確認されていた嘉陽海域で痕跡は見つからなかった。沖縄防衛局の調査に続き、環境省の調査でも食み跡を確認できなかったことになる。

 古宇利、済井出海域でも確認されなかった。

 環境省は、餌場が別の場所に移った可能性があるほか、食み跡が短期間で消えることもあると指摘。「厳しい状況は承知だが、引き続き調べる」とした。